PC配水池の耐震補強および補修と場内整備に関する工事報告
はじめに
中央送水所は、大阪広域水道企業団からの受水を摂津市内へ配水し、状況に応じて太中浄水場へ送水する施設です。
1号配水池は昭和46年築造、2号配水池は昭和52年築造で、配水池本体の老朽化が進行し、かつ現在の耐震基準を満足していない状況であり、災害により市内の配水管が破損した場合、1号・2号配水池の貯留水が流出してしまう恐れがありました。
これを改善するために令和2年3月から4年の歳月をかけて中央送水所の整備工事を進めており、先に1号配水池をステンレスタンクに建替え(別工事)を行い、その後2号配水池について耐震補強および内外面補修を実施し、さらに応急給水管を設置して災害時には、配水池の貯留水を給水車に直接給水できる給水の拠点となりました。本稿は、2号配水池の耐震補強と内外面補修、場内配管工、場内整備工に関する工事報告です。
図-1 中央送水所位置図
工事概要
工事名 | : | 中央送水所2号配水池耐震補強工事 |
発注者 | : | 摂津市上下水道部 |
元請業者 | : | 機動建設工業株式会社 関西支店 |
所在地 | : | 大阪府摂津市三島1丁目1-10 |
工期 | : | 2022年8月5日~2024年3月17日 |
工事概要 | : | 資材搬入口設置工 |
底版耐震補強工 | ||
配水池補修工 | ||
場内配管工 | ||
場内整備工 | ||
電気設備工 |
図-2 中央送水所(左側 2号配水池)
施工フローチャート
本工事の全体施工フローチャートを図-3に示します。
工種が多く、協力業者は複数社となったため、業者間の引継ぎをスムーズに実施できるように、日頃の打合せや工程管理を入念に実施しました。
また、中央送水所には、上下水道部建屋やお客様窓口があるなど、上下水道部職員と一般のお客様の出入りを妨げないように工事を行う必要がありました。
そのため、工事場所の明示や安全対策に十分配慮して工事を行いました。
底版耐震補強工
資材搬入口設置工(開口)、既存塗膜除去工(底版)
底版耐震補強工事に先立って、配水池内部へ資機材等を搬入する資材搬入口の開口を施工しました。
配水池ドーム屋根の所定の場所をコア削孔し、ワイヤーソー工法にて開口施工しました。
まず、足場の無い状態で施工可能な範囲(底版および側壁)について、既存塗膜の除去を超高圧洗浄にて実施しました。
施工に先立って試験施工を実施し、既設塗膜の除去と既設コンクリート面の撤去状況を確認したうえで、吐出水圧を180MPaとして超高圧洗浄を実施しました。
あと施工せん断補強工
本工事の耐震補強は、底版と側壁の結合部にコンクリートを増打ちし、せん断と曲げに対して補強します。
本来、あと施工せん断補強工法(RMA工法)は、せん断補強する部材の中に埋設するものですが、本工事においてはせん断補強及び曲げ補強のアンカーとして機能します。
RMA工法の特徴としては、プレミックスモルタルを収容したカプセルを定着材として採用しています。
既設コンクリートにせん断補強鉄筋を定着するための孔をあけます。
その孔にカプセルとせん断鉄筋を挿入して定着します。
現場でのモルタル混錬や注入孔の設置が不要であるため、施工の効率化が図れます。
写真-4 鉄筋探査状況 写真-5 削孔位置マーキング 写真-6 削孔状況 写真-7 せん断補強筋打設 写真-8 打ち込み完了 写真-9 鉄筋組立完了
底版耐震補強部コンクリート
あと施工せん断補強筋および曲げ補強用鉄筋と型枠の組立完了後に耐震補強部コンクリートの打設を行いました。
打設作業は、コンクリートポンプ車を使用して行いました。
写真-10 コンクリート打設状況 写真-11 コンクリート打設完了
配水池補修工
足場組立・既設塗膜撤去工(天井・内外壁)
配水池内外部に足場を組立てたのち、池内部の天井と内壁は、底版部と同様に超高圧洗浄により既設の塗膜の除去を行いました。
ドーム屋根は無塗装、外壁部は塗装の劣化が激しく付着力がほとんどなくなっていたため、高圧洗浄(30MPa程度)で水洗い清掃を実施しました。
写真-12 配水池内部足場組立状況 写真-13 配水池内部足場組立完了 写真-14 配水池外部足場組立 写真-15 外部足場防音シート養生
配水池内面、ドーム屋根・外壁補修工
既設塗膜撤去後にコンクリート面の劣化調査を実施しました。
補修の必要のあるひび割れや断面欠損、鉄筋の錆等をマーキングしてから補修工事を行いました。
断面修復工:既設コンクリートの浮き等の脆弱部をハンマードリルにて斫り撤去しました。
斫り完了後に内部鉄筋の錆をケレン除去したのち鉄筋防錆材を塗布し、修復はポリマーセメントモルタル材を使用しました。
写真-16 カッター完了 写真-17 脆弱部斫り撤去状況 写真-18 脆弱部斫り撤去完了 写真-19 鉄筋防錆材塗布 写真-20 ポリマーセメントモルタル施工状況 写真-21 断面修復完了
ひび割れ補修工:既設コンクリートに生じているひび割れの補修は、配水池内部(天井・側壁)、ドーム屋根および外壁部に対して施工しました。
ひび割れの補修方法は、発生しているひび割れ幅が0.2~0.5mm程度であり、配水池の補修の観点から防水性を重視し今後ひび割れ幅が変動しても追随できるポリウレタン系のシーリング材を用いたUカットシール工法にて補修を行いました。
写真-22 Uカット状況 写真-23 Uカット完了 写真-24 シールプライマー塗布 写真-25 Uカットシール状況 写真-26 Uカットシール完了
ドーム屋根防水塗装工
ドーム屋根の補修完了後に下地調整工、ドーム屋根防水塗装工を実施しました。
防水塗装工は、施工中の配水池内部への雨水等の進入を防ぐために、内面防食塗装工に先立って実施しました。
防水塗装材は、超速硬化ウレタン吹付システムを採用し施工しました。
写真-27 下地調整材塗布 写真-28 防水塗装材吹付状況 写真-29 防水塗装完了
内面防食塗装工
内面補修工・ドーム屋根防水塗装工完了後に下地調整工、内面防食塗装工を実施しました。
防食塗装材は、日本水道協会の規格(JWWA K-143)を満足しているポリウレア樹脂を使用しました。
写真-30 下地調整工施工状況(天井・内壁) 写真-31 内面防食塗装材吹付状況(天井・内壁) 写真-32 内面防食塗装完了(天井・内壁)
内部の足場解体後に底版部・耐震補強部の防食塗装を実施しました。
写真-33 下地調整工施工状況(底版・耐震補強部) 写真-34 内面防食塗装材吹付状況(底版・耐震補強部) 写真-35 内面防食塗装完了(底版・耐震補強部)
外壁塗装工
外壁の補修完了後に下地調整工、外壁塗装工を実施しました。
外壁塗装材は、下地のひび割れに追随し外壁の防水性を向上できる塗膜防水材(防水形複層塗材)を採用し施工しました。
写真-36 下地調整工施工状況(外壁) 写真-37 塗装材吹付状況(外壁) 写真-38 塗装材吹付完了(外壁)
場内配管工
2号配水池内部の流入管および越流管は、老朽化が進行していたため、新管に交換および既設管の塗り替えを行いました。
場内の流入管と排泥・越流管も同様に交換しています。
また、地震時の給水拠点となるように給水栓を場内2か所設けました。
写真-39 配水池内部流入管(施工前) 写真-40 配水池内部流入管(完成) 写真-41 場内応急給水管 給水栓設置 写真-42 場内応急給水管 給水栓ボックス設置
場内整備工
中央送水所は、今まで出入り口が正門1箇所のみでしたが、災害時の給水車の出入りをスムーズに行うために新たに非常用門扉を設置しました。
以前から使用している正門は、電動門扉を交換しています。
また、場内は、舗装し駐車マスの区画明示を行いました。
これにより多くのお客様の車利用が可能となっています。
場内配管工で設置した給水栓に仮設型給水車用給水栓(可搬式)を接続することで、給水車に直接給水することが可能となっています。
写真-43 非常用門扉設置 写真-44 電動門扉設置 写真-45 仮設型給水車用給水栓(可搬式) 写真-46 給水状況(発注者) 写真-47 駐車マス区画線 写真-48 横断歩道ライン
おわりに
本工事は、一般のお客様も利用される中央送水所内での工事のため、発注者のHPなどで市民向けに広報されており、作業工程や現場作業範囲の明示・安全対策について十分検討を実施するとともに、上下水道部建屋が近接しているため、騒音の生じる作業は工程を調整するなど工夫して施工しました。
その結果、無事故・無災害で工期内に工事は完了しました。
最後に本工事においてご指導頂いた発注者である摂津市上下水道部の皆様および各協力業者様に感謝致します。
写真-49 施工前(2号配水池) 写真-50 完成(2号配水池) 写真-51 完成(1・2号配水池 上下水道部正門)