稼働後40年が経過した浄水場の耐震補強および内面補修の工事報告 (東第2浄水場耐震補強他工事)

はじめに

東第2浄水場は、長岡京市内唯一の浄水場であり、昭和57年より稼働し約40年が経過しています。
地方公営企業法で定められた耐用年数60年まで安全な水を安定供給していくためには、一部施設の耐震補強工事や、浄水場が稼働しているときには実施できない修繕を行う必要があります。
本工事は、東第2浄水場の施設である浄水池の耐震補強と内面補修、前処理棟および酸化槽の内面補修を行う工事です。
本稿は、浄水池の耐震補強と内面補修、前処理棟と酸化槽の内面補修の施工に関する工事報告です。

図-1 東第2浄水場位置図

工事概要

工事名東第2浄水場耐震補強他工事
発注者長岡京市上下水道部
元請業者機動建設工業株式会社 関西支店
所在地京都府長岡京市神足棚次地内
工期2021年8月13日~2022年6月30日
工事概要耐震補強工鉄筋探査工,あと施工せん断補強工
底版CON斫り復旧工
水抜き工,洗浄工(無塗装部),清掃工
高圧受電盤・発電機移設復旧工
扉撤去設置工
内面防食塗装工(前処理棟)
内面防食塗装工(酸化槽)
内面防食塗装工(浄水池)
仕切弁撤去据付工
充填剤撤去設置工充填剤撤去設置工,床版・架台撤去設置工
図-2 東第2浄水場平面図

浄水場設備の概要を図-3に示します。
①取水井戸から⑨浄水池までの水の流れを模式的に表しています。
本工事の内面防食塗装工の施工箇所を青字で、耐震補強工の施工範囲を赤字で示しています。
浄水池においては、耐震補強工事を行うことで兵庫県南部地震に相当する地震が発生したとしても、浄水池としての機能を損なわないように対策しています。
本浄水場では、図-3の②着水井③曝気④混和池を有する構造物を前処理棟と呼んでいます。

図-3 浄水場設備概要図(※水だより資料抜粋)

施工フローチャート

図-4 施工フローチャート

本工事は、浄水場の機能を停止して行います。
浄水場からの水道水の供給再開は、工期内に実施することが決定しており、施工可能期間が限られていたため工程管理が課題でした。
本工事の全体施工フローチャートを図-4に示します。
工種が多岐にわたり、協力業者は複数社となるため、業者間の引継ぎをスムーズに実施できるように、日頃の打合せや工程管理を入念に実施しました。
また、浄水池・前処理棟・酸化槽で施工する同じ工種については、各構造物間で連続して施工できるように、工程調整を密に行いました。

耐震補強工事

高圧受電盤・発電機盤移設工

耐震補強工事に先立って、工事に障害となる高圧受電盤と発電機盤を移設しました。
高圧受電盤は、屋内から屋外へ移動し、発電盤は作業可能となる位置まで移動しました。
また、移設期間中は仮設キュービクルを設置して、施設内の電源確保を行いました。

既設扉撤去工・新設扉設置工

既設扉の直下にあと施工せん断補強工が計画されているために、既設扉を撤去しました。

あと施工せん断補強工事完了後に、新設の扉を設置しました。

底版CON斫り撤去

高圧受電盤室には、勾配コンクリート(厚み約400mm)があり、既設梁の鉄筋探査作業の支障となるため、あと施工せん断補強の施工基準面位置までコンクリートを撤去しました。

鉄筋探査工

底版CON斫り完了後、鉄筋探査工にて既設鉄筋の墨出しを行いました。

あと施工せん断補強工

本工事での浄水池の耐震補強工は、あと施工せん断補強工法(RMA工法)で実施しました。
RMA工法の特徴としては、プレミックスモルタルを収容したカプセルを定着材として採用しています。
既設コンクリートにせん断補強鉄筋を定着するための孔をあけます。
その孔にカプセルとせん断鉄筋を挿入して定着します。
現場でのモルタル混錬や注入孔の設置が不要であるため、施工の効率化が図れます。

図-5 RMA工法施工概要図(※(株)ケー・エフ・シーHPより抜粋 一部修正)

底版CON復旧工

あと施工せん断補強工完了後にコンクリートを打設して底版の復旧を行いました。

浄水池の地下部も、同様にあと施工せん断補強工事を実施しています。
後述する既設塗膜撤去を実施してからあと施工せん断補強工を施工して内面補修工を行っています。

内面補修工事

既設塗膜撤去工

各池の内部に足場を組立ててから、超高圧洗浄により既設の塗膜の除去を行いました。
施工に先立って試験施工を実施し、既設塗膜の除去と既設コンクリート面の撤去状況を確認したうえで、吐出水圧を180MPaとして超高圧洗浄を実施しました。

内面補修工

既設塗膜撤去後にコンクリート面の劣化調査を実施しました。
補修の必要のあるひび割れや断面欠損、鉄筋の錆等をマーキングしてから補修工事を行いました。

断面修復工

既設コンクリートの浮き等の脆弱部をハンマードリルにて斫り撤去しました。
斫り完了後に内部鉄筋の錆をケレン除去したのち鉄筋防錆材を塗布し、修復はポリマーセメントモルタル材を使用しました。

ひび割れ補修工

既設コンクリートに生じているひび割れは、そのほとんどが0.2mm幅程度であったので、エポキシ樹脂を注入できる低圧式のひび割れ注入工で補修を行いました。

露出鉄筋補修

主に天井面に露出している鉄筋や鉄材の錆を除去したのちに防錆材を塗布しました。

内面防食塗装工

内面補修完了後に下地調整工、内面防食塗装工を実施しました。
防食塗装材は、日本水道協会の規格(JWWA K 143)を満足しているポリウレア樹脂を使用しました。

付帯設備工

前処理棟においては、内面補修を行う上で支障となる付属物がありました。
付属物は、施工前に一時撤去し防食塗装完了後に復旧しました。
付属物の中で、経年劣化が酷く継続使用が困難な物については、新品に交換しました。

おわりに

本工事は、浄水場の機能を停止して実施することとなるため、発注者のHPなどで市民向けに広報されており、施工のトラブルや事故等により工期を遅らせることの出来ない状況でのスタートでした。
工事着手前から発注者および協力業者と安全作業と工程について打合せを実施し、浄水池・酸化槽・前処理棟の3池をほぼ同時に施工するなど工夫して工期短縮に努めました。
その結果、無事故・無災害で工期内に浄水場の再稼働が実現出来ました。
最後に本工事においてご指導頂いた発注者である長岡京市様および各協力業者様に感謝致します。