シールド坑内から発進した推進施工報告
はじめに
本工事は、名古屋市の浸水対策事業として笈瀬幹線の越流水をほのか雨水幹線経由で名駅南雨水調整池(貯留管)に取水するための工事である。
工事概要とその特徴
工事名 | ほのか雨水調整池流入管下水道築造工事 | |
発注者 | 名古屋市上下水道局 | |
請負者 | 不動テトラ・徳倉・東海特別共同企業体 | |
施工期間 | 平成30年4月1日~平成30年10月31日 | |
施工場所 | 名古屋市中村区椿町地内 | |
工法 | 泥水式推進工法 | |
管径 | 2000㎜ | |
管長 | L=1200㎜ | |
土質 | 砂質シルト | |
N値 | 15~25 | |
地下水位 | GL-2.6m | |
土被り | GL-8.950 | |
施工延長 | L=33.60m | |
曲線 | R=300m(CL=11.374m) | |
特徴 | 本工事は、内径3993㎜のセグメント内から内径2000㎜の推進管を布設する工事です。 推進施工箇所は、シールド立坑から途中R=20mの曲線区間を含む300m先で行いました。 発進時の鏡切りは通常のガス切断ではなくFFUセグメントを直接切削発進しました。 |
課題と対策
掘進機の運搬据付
20tの掘進機をシールド坑内に運搬して発進架台に据付作業を行うのは難しく運搬台車をそのまま発進架台としました。
台車上の架台に荷重がかかると推進時に台車のずれが懸念されたのでチルタンクを設置して発進架台部分に荷重が作用しないようにしました。
狭小スペースでの推進施工
円形内での限られたスペースで施工するにあたり既存の機材を使用して施工はできませんでした。
今回、掘進機と元押しジャッキを新たに製作して施工しました。
掘進機 全長2773㎜ 元押ジャッキ(1680st) 最大 2665㎜ 最小 985㎜
FFU直接切削発進
セグメントが円形のため通常の面盤形状では、外周を先に切削してしまい中央部分をのセグメントを未切削の状態で押しぬいてしまうためセグメントの曲線に合わせたドーム型面盤としました。
また、掘進速度が速すぎるとFFUセグメントの破損や掘進機のローリングが懸念されたため切削推進のみ使用する超低速制御可能な油圧装置を使用しました。
切削したFFU片により排泥管路で閉塞が多発するのが想定されましたのでFFU回収箱を設置して閉塞箇所を限定しました。
超低速油圧装置 FUセグメント FFU回収箱 FFU回収箱内部
バッキング防止
本工事は300KNのバッキング力が作用すると想定されました。
推進管運搬中に発生すると大きな事故に直結しますので防止設備を設置しました。
狭小な空間でバッキング防止設備を講じた状態で次の推進管をセットするため推進管のカラー部外側に反力金具をボルトで組付けて鋼材で支持する構造にしました。
バッキング防止 設置状況 反力金具
施工結果
実施工では、管据え付け時に運搬台車が毎回必ず同じ場所を通過するわけでなく押輪と管が干渉する時がありましたが、管をチルタンクで台車から浮かしていたため人力で移動できたため問題なく施工できました。
FFUセグメントの切削片により掘進機後方で閉塞が多発しましたが閉塞箇所を限定していたため復旧は、速やかに行えました。
泥水式でFFUを切削するときは、閉塞箇所の限定が必要であると確信しました。
その他諸問題も事前の計画により問題なく施工することが出来ました。
おわりに
今回は、シールド内発進推進工事を報告しました。
前例のない施工で限られた空間の中での施工でしたが計画段階から検討を細部にわたって繰り返し実施したことで大きなトラブルなく工事を完了できた大きな要因であると考えます。
工事完了にあたり、ご協力いただいた関係者にはこの場を借りてお礼申し上げます。
本工事の結果により都市部などの立坑築造が困難な場所では今後同様な工事が計画されると思います。