藤枝工事-防爆仕様掘進機での施工
藤枝工事は、藤枝市発注の下水道工事でφ900mm、209.65m(136.25m+73.4mの2スパン)を泥濃式により推進する工事でした。
当工事区域は、メタンガス(最大79.75%検出)が出るため、特筆すべき点をメタンガス対策に絞り報告します。
はじめに、メタンガスの特性を挙げておきます。
- 無色・無臭
- 比重は空気1.0に対して0.55と軽いため、高い位置に蓄積しやすい。
- 無毒であるが、濃厚になると酸素欠乏のために呼吸肉難、あるいは目眩を起し時には窒息することがある。
- 一度濃度が薄くなったものは、自然状態では濃くならない。
- 爆発(燃焼含)する範囲は空気中濃度で5.0~15.0%である。
- 最も激しい爆発をする濃度は9.5%で、爆発圧は7kgf/cm2、爆発温度は2000℃である。
- 爆発に至らず燃焼した場合でも、火炎を吸い込み(肺がやられる)死亡した例もある。
- 高濃度のメタンガスでも、希釈される段階で必ず爆発限界内を通過する。
以上の特性に対応するため、当工事では防爆対策として以下の事項を実施しました。
- 掘進機及び付属機器は防爆構造の物を使用する。
- 換気設備によって機内の可燃性ガスを希釈拡散させる。
- ガス検知システムによってガス濃度を集中管理する。
- 非常停止装置によって爆発の危険を防止する。
掘進機及び付属機器は防爆構造の物を使用する
防爆仕様掘進機の対応を決定するためには、ガスの発生源とその危険場所等級を設定する必要があります。
ガス発生源として地中からのガスが管内に入る場所は、排土口と推進管の目地です。
危険場所等級設定に関しては、まず危険区域と非危険区域の設定をしました。
危険区域とは掘進機内及び推進管内、10mとしました。
この区域は換気設備に異常が生じた場合(故障等)にのみ危険な区域となりますが、これは「工場電気設備防爆指針」のなかで第2種場所として設定している文章「確実な機械換気装置に故障が生じた場合には可燃性ガスが集積して危険な濃度となる恐れがある場所」にあてはまります。
しかし当現場では掘進機内で手動により作業員が作業するという状況においては、安全を考慮して第1種場所に設定することになりました。
非危険区域とは、立坑及び推進管内10m手前までですが、推進管内が非危険区域として設定されるのは換気装置が正常に作動している場合であるため、先の危険区域、第1種場所での使用に適した物は「耐圧防爆」と「本質安全防爆」構造の防爆機器であり、まず、これを装備した掘進機の選定となりました。
「耐圧防爆」とは、電気的に火花が発生したり、高温になったりする場所や部分を堅牢な容器の中に納め、万が一これらの場所で爆発が起きた場合でも、発生する火炎が箱から外に出ない様に設計された物です。
当工事の掘進機では、カッター駆動電動機、機内照明、ピッチング・ローリング表示計等があてはまります。
また「本質安全防爆」とは、危険場所に流れる電気の電流と電圧が万が一短絡した場合にも発火しないレベルまで落とし、さらに電気回路が短絡した場合には回路を遮断するような回路構成になっている物で、機内操作盤、電話機等がそうでした。
換気設備によって機内の可燃性ガスを希釈拡散させる
換気設備を選定する際は、ガス希釈に必要な換気量、坑内作業員の必要換気量を算定した結果21m3/minとなったため、30m3/minのサイレントブロアとなりました。
ガスの希釈拡散を目的としているので、管内での風速が0.5m/sec以上を確保しているか風速計にてチェックしました。
ガス検知システムによってガス濃度を集中管理する
非常停止装置によって爆発の危険を防止する
ガス検知システムについては、掘進機内に酸素(O2×2、メタン(CH4)センサー×1、管内にもメタンセンサーを配置し、24時間体制で測定結果を記録紙に残せる物を選定しました。
メタンについては、1次警報点を5.0%LEL、2次警報点を30.0%LELと設定しました。
1次警報を超えた場合、パトライトとブザー警報が掘進磯、立坑内、集中管理室で発令され、作業員は、直ちに地上へ退避する事とし、2次警報を超えた場合、管内の電気関係はすべて遮断する事としました。(100.0%LEL=5.0VOL%)
他には大気圧を朝昼夕と記録し、気圧の急激な下降時には、注意を払い施工しました。
結果的には、掘進機内、管内発進立坑内においてメタンガスの検出はありませんでした。
しかし前期に同汚水幹線を施工した際には、送風機2台を使用し、ガス検知器にて頻繁に測定していたにもかかわらず、釜揚よりメタンガスが湧出し、ガス切断機の炎が引火し、水中ポンプのホースが一部焼けるということがありました。
私の目前で炎が上がり一瞬戸惑いましたが消化器を準備してあったので何とか大事には至りませんでした。
しかし消火訓練では使用した事はありましたが、実際に消火器を使用するのは初めての経験でした。
もし、前回のガス湧出時の濃度が、爆発限界内を希釈され通過中の濃度だったらと思うと今でも恐ろしい事です。