応神町工事報告
工事概要
当工事は、第十幹線水路(正法寺川・旧正法寺用サイホン)施工にあたり、内径3000mmの鉄筋コンクリート管でL=202.07m(2スパン)を泥水加圧式推進工事で布設するものです。
工事名 | 平成15年度 吉野川下流域農地防災事業 第十幹線水路(正法寺川・旧正法寺川サイホン)工事 | |
工事場所 | 徳島県徳島市応神町内 | |
発注者 | 中四国農政局 | |
推進工の諸元 | 仕上がり内径 | 3000mm |
推進工法 | 泥水加圧式推進工法 | |
推進延長 | L=78.18m(正法寺川) L=123.89m(旧正法寺川) | |
曲線半径 | R=145m(旧正法寺川) | |
土質 | シルト混じり砂 | |
土被り | GL-6.35~10.50m GL-6.35~10.75m | |
勾配 | +-0% |
施工計画
今回報告しますのは、曲線半径R=145mを含む、L=123.89m(旧正法寺川)スパンの推進工事です。
バッキング防止計画
土被りが10m以上有り、地下水が存在するため、掘進機面板には発進立坑側へ掘進機を押し戻そうとする力(バッキング力)が働きます。
推進中は、推進ジャッキにより推力を加えているために問題はありませんが、次の管の据付け時には、押し切った管と元押ジャッキを離すため、押し切った管が発進立坑内へ押し戻されて次の管がセットできないという問題が発生します。
また、管の押し戻しにより切羽先端の地山が崩壊し、地盤沈下による地下構造物や地下埋設物等への悪影響も考えられます。
管の周面摩擦による抵抗力がバッキング力より大きくなった時点で、バッキングは解消されますが、それまでの間はバッキング防止のための対策が必要となります。
このため、施工条件等からバッキング力を想定し、所定の安全率を見込んだバッキング防止力を決定しました。
バッキング防止装置としては、H鋼材によって組立てられた枠材に、ヒューム管の外壁にインサートアンカーによって固定されたブラケットを押し付けることによって防止する方式を採用しました。
曲線推進計画
本工事は、内径3000mmで、標準管(L=2.43m)を使用した曲線半径145mの急曲線推進施工となります。
このため、掘進機に対する追随性の向上と管端面での点接触を防止するために、センプラカーブシステムを採用しました。
事前に各継手部の折れ角や推進力から、センプラリングの種類や厚さなどを選定しました。
推進力低減計画
本工事は、推進延長は比較的短い距離ではありますが、管径が大きいことから地山の締め付けによる推進力の増大が予想され、推進力の低減を目的として、アルティミット滑材充填システム(ULIS)を採用しました。
注入は、一次と二次注入を2系統の配管で行なう方式を採用しました。
滑材は、全土質に対応可能で、経時変化が少ない超高粘性滑材であるアルティ-クレイを採用しました。
近接構造物管理計画
推進路線上に構造物が近接しており、推進施工による影響を評価するために自動計測による動態観測が計画されました。
近接構造物としては、県道徳島北灘線P4橋脚、水道橋橋台、旧正法寺川橋台です。
施工状況
慎重な鏡切りを行なった後、本格的な掘進を開始しました。低推進力を維持するために、当初より滑材の注入に努め、管外周に滑材が万遍なく行き渡るように配慮した結果、最終推進力は、計画推進力17,000kNに対して14,000kNに低減できました。
バッキング防止装置は、効果的に機能し後退現象にともなうトラブルもなく、作業の効率化が図れました。
曲線推進は、計画時に想定した各継手部の推進力が維持できるように管理し、無事高精度に推進管列を掘進機の軌跡に追随させることができました。
近接構造物の管理は、泥水管理、掘削土量管理を行なうことにより、安定した推進施工が行なえ、計測値が許容値を超えることなく終了できました。
おわりに
私にとって、大口径管で急曲線という推進施工を、無事終了できたことは大変有意義な経験となりました。
今後、この経験が同様の推進施工に役立つことを願います。
推進途中、台風23号の影響で現場周辺の冠水で、発進立坑水没の危機に見舞われましたが、現場職員一同の必死の努力により回避できました。
自然現象の恐ろしさを改めて知る貴重な体験でした。
最後になりますが、計画段階から施工終了まで、本社の方々のご指導・ご鞭撻をいただき無事工事を完成することができましたことを、ここに御礼を申し上げます。