シールド坑内への到達 難条件に挑戦 アルティミット工法 ~長距離、軟弱地盤、狭小ヤード~

はじめに

本工事は、玉川ポンプ場建設工事の一環で既存の栄川ポンプ場を解体撤去する為、新設する玉川ポンプ場へ流入させる管路を築造する工事です。
推進線形は、平面方向に最小曲線半径R=80mを含む5箇所の曲線区間があり、縦断方向は1.7‰の下り勾配です。
対象土質は、N値0~3の軟弱なシルト層で、到達箇所はセグメント内径φ3644mmのシールド管路になります。

工事概要とその特徴

工事名第80工区 玉川ポンプ場建設工事
工事場所山口県宇部市助田町4
発注者宇部市
施工者三井住友建設・クボタ・東芝インフラシステムズ・日本水工設計・
日立建設・宇部興機・前村電気工事特定建設工事共同企業体
工法泥水式推進工法(アルティミット工法外筒残置)
管呼び径2200
管種JC53半管・標準管、JC53中押管、JC53合成鋼管、JB53半管・標準管、JB53可とう管
推進延長L=545m
曲線R=200m、R=200m、R=150m、R=150m、R=80m
土被りH=8.4~8.9m
土質シルト N値0~3
発進立坑鋼矢板 L:9.0m×B:6.0m×H:12.0m
到達立坑セグメント内径φ3644㎜
推進期間2022年3月24日~2022年 8月16日
図-1 推進基線(平面)

本工事での検討事項

長距離推進であることから、周辺抵抗の増大による推進力増大の懸念

対策

一次滑材として、塩分の影響を受けにくいアルティークレイ(二液性)を採用。
二次滑材をアルティーK(一液性)にて注入し、テールボイドを確実に確保する。

結果

推進途中のグラウト孔調査および推進力管理グラフ(図-2)からテールボイドは保持されていたと推察する。

図-2 推進力管理グラフ

N値0~3の軟弱地盤であることから、掘進機反力不足による縦断方向および左右方向の精度不良の懸念

対策

掘進機後方に補助修正ジャッキを配置する計画とした。(図-3 掘進機図全体図)

図-3 掘進機全体図(クリックすると全体図が拡大されます。)

写真-1 掘進機面板および掘進機全景

結果

修正量は想定より大きくなったが、修正ジャッキのみで対応可能であった。

狭小スペースのため、推進作業の効率減少による日進量減少の懸念

対策

坑内近辺にある既設水路を利用し泥水還流配管を設置、プラント設備を発進基地に設けず遠隔地に配置。(図-4および写真-2)

結果

当初工程通り施工完了した。

シールド到達時の精度不良の懸念

対策

自動測量システム(写真-3)を配置し、測量時間の短縮と、測量回数を増やす。

写真-3 管内自動測量器

結果

こまめに測量した結果、基準値内であった。

シールド到達時の精度シールド到達鏡切時の土砂流入・崩壊の懸念

対策

地中接続部は、高圧噴射にて確実に改良、シールド坑内にもLW壁を構築。(図-5 施工順序)

図-5 施工順序

結果

土砂流入および崩壊は無く、無事施工できた。

施工報告

施工時の当初想定していなかった技術的な問題点は特になく、計画通りに施工完了できた。

おわりに

今回の工事は、シールド到達と前例が少なく不安であったが、計画段階から、綿密に検討を繰り返し、無事に完了させることができました。
ご協力いただいた関係者の皆様には、この場を借りてお礼申し上げます。
今後も、老朽化したポンプ場の統合による新設管路築造、地中接続にアルティミット工法が貢献できればと思います。