No.63 巨石を含む地盤での海底推進施工報告

担当部門 九州支店
藤田 啓司

 1.はじめに

 本工事は、福岡県豊前市大字八屋地内において、豊前バイオマス発電設備敷地内取水ピットに隣接する発進立坑から沖合500m付近の新規取水口までの取水管路を、呼び径2000の推進管を使用してアルティミット泥水式推進工法で築造するものです。

 2.工事概要とその特徴

工事名 豊前バイオマス発電所に係る取放水設備建設工事
工事場所 福岡県豊前市大字八屋地内
発注者 豊前ニューエナジー合同会社
施工者 若築建設株式会社
工法 アルティミット泥水式推進工法
管呼び径 2000
管種 外殻鋼管付きコンクリート管(合成鋼管) 継手性能 0.4MPa L=2.43m
     高耐圧対応コンクリート推進管(JIP管) 継手性能 0.4MPa L=2.43m
     中押S管およびT管(JIP管仕様) 継手性能 0.4MPa
     下水道推進工法用鉄筋コンクリート管(NS推進管) 継手性能 0.2MPa L=2.43m
推進延長 L=468.629m(縦断延長)
曲線 縦断曲線半径R=1000m、曲線区間長CL=52.138m 1箇所
土被り H=10.5m(陸上)〜6.9m(海底)
土質 凝灰岩礫(Dg層、N=50以上)、凝灰質砂(Dvs層、N=7〜50以上)
発進立坑 鋼矢板 L12.8m×W41.6m×H12.7m
到達立坑 鋼矢板 L6.2m×W5.2m×H9.6m
施工期間 平成29年5月8日〜平成30年1月17日


図-1.施工平面図


図-2.施工縦断図

 推進管路は発進してから約8mは陸上ですが、それ以降は海底で掘進機は海底に築造した立坑から回収する計画です。
 推進線形は平面的には直線ですが、縦断的には5.73%の下り勾配で発進し、半径1000mの縦断曲線を経て0.51%の下り勾配で到達するもので、巨石を含む凝灰岩礫層、N値50以上を含む凝灰質砂層を掘進し発進と到達の高低差は10.2mとなっています。

 3.課題と対策

 本工事の海底推進における主な課題と対策は次のとおりです。
  1. 海底での泥水の噴発を防止するには切羽圧力を一定に保持する必要がありますが、礫地盤では礫破砕のために瞬間的な閉塞が発生することがあります。
    そのため、設定した切羽圧力を超えた場合に機内バイパスが作動して切羽還流から機内還流に自動的に切り替わる緊急圧抜き装置を使用することとしました。
  2. 最大礫径570o(3倍想定)の巨石に対しては、ローラビットによる1次破砕とコーンによる2次破砕で対応することとしました。
  3. 凝灰質砂層では泥土化による面板閉塞が懸念されたため、強化型シェルビットを全軌跡確保するように配置し、また面板洗浄を目的に面板正面から補助的に循環泥水を送るためのセンター送水機構を設けました。

    写真-1.掘進機面板 写真-2.センター送水機構

  4. 海底推進のため地下水が多いことと塩分が含まれている可能性があり、滑材の希釈劣化を防止するため1次滑材には塩分の影響を受けない「アルティークレイ」、2次滑材には高粘性の「アルティーK」を採用しました。
    また、2次滑材の注入システムとして掘進速度に合わせて自動で注入を行うことができるアルティミット自動滑材注入システム「ULIS」を採用しました。

    写真-3.ULIS制御盤と管内バルブユニット写真-4.アルティークレイ写真-5.アルティーK

  5. 海中で掘進機と推進管を水没させることなく切り離し、掘進機を回収するため隔壁に水密扉を有した切り離し設備筒(第1隔壁筒+第2隔壁筒)を採用しました。


    図-3.掘進機本体+切り離し設備(第1隔壁筒+第2隔壁筒) ※特許登録済み(特許第4139405号)


    写真-6.切り離し設備(第1隔壁筒+第2隔壁筒)


    図-4.掘進機海中切り離しフロー図 ※特許登録済み(特許第4139405号)

    切り離し設備筒の止水性能を確認するため、工場検査時に第1隔壁筒と第2隔壁筒を接続した状態でコンプレッサーにより内圧をかけて耐圧試験を行いました。
    また、実施工において第1隔壁筒と第2隔壁筒を切り離す前に隔壁筒内に海水を注水し掘進機内への海水の侵入が無いことをTVカメラで確認できる構造としました。

 4.施工結果

 実施工では潮の干満により自然水圧が変動するため掘進開始前の切羽圧力計による自然水圧の確認だけでなく、潮見表を参考に潮位を予測し切羽圧力の調整を行いました。
 このように、海底推進工事には自然水圧の変動に対して切羽圧力の調整が可能な泥水式が最適であると確信しました。
 掘進作業では凝灰岩礫層掘進中はカッタトルクが大きく振れることもありましたが、凝灰質砂層では懸念された面板閉塞が発生することはなく、当初計画以上の日進量を確保することができました。
 また、事前に検討したとおりULISにより確実な滑材注入を行えたことで計画推進力の約72%(8,100kN)で到達することができました。
 そして、一番の検討課題であった海中からの掘進機回収については、海中作業の視界が想像以上に悪く(視界はよくて20cm)作業が思うように進まないことはありましたが、トラブルもなく無事掘進機を海中から回収することができました。

写真-7.掘進機+第1隔壁筒回収

写真-8.管路海上(発進側から到達側)

写真-9.第1隔壁筒内(掘進機回収後) 写真-10.推進管内第2隔壁筒(扉の向こうは海)

 5.おわりに

 今回は、海底推進工事の施工事例を紹介しました。海中からの掘進機回収等厳しい施工条件でしたが、計画段階から細部にわたって検討を繰り返して対策を試みたこと、施工において現場担当者が細心の注意をはらい推進工事全体の施工管理をおこなえたことが、大きなトラブルもなく無事に工事を完了させることができた大きな要因であったと考えます。
 工事完了にあたり、ご協力いただいた関係者の皆様にはこの場をお借りしてお礼申し上げます。本工事の結果は、日本の推進技術の高さを証明し、また今後多方面において海底推進工事が活用されることを期待しています。