No.60 富山県南砺市井波地区大型貯水槽建設工事施工報告

担当部門 PC事業部
伊藤 大介

 1.はじめに

 本工事は、富山県南砺市井波地区における降雪・積雪対策を目的とした、消雪装置の利用用水を溜める大型貯水槽(PC造 V=19,700m3)を構築するものであり、当社は床版・側壁を構築するコンクリート工事を担当しました。

 2.工事概要

構造形式
  本体構造 PC製円筒形タンク
  基礎形式 直接基礎(一部地盤改良)
  底版形式 RC円版
  側壁下端形式 自由支承 ※
  側壁形式 PC円筒形シェル
 
諸寸法
  有効容量 V=19,700m3
  有効水深 H=8.0m
  内径 D=56.0m
  壁厚 T=0.35m
 
工事内容
  PC貯水槽工事
    底版工事
    支承工事
    側壁工事
    PC工事
    外面塗装工事
    内面防水工事



図-1 PC製円筒形タンク一般図

※自由支承構造とは、側壁下端の回転および水平方向変位を許す側壁下端と底版の結合方法です。
 鉛直荷重は、側壁パネル下側に配置するゴム支承で支持し、地震時の水平力に対しては、耐震ケーブル(PC鋼より線を使用)で抵抗させます。
 自由支承構造を採用した際の効果として、支承部にモーメントが発生しない為、底版の部材厚を小さくする事ができます。
 また、過去に発生した震度6以上の大地震に対して、自由支承PCタンクが1基も被害を受けていない事から、耐震性の高さが実証されています。

 3.工事現場の状況


図-2 現場ヤード図

 本工事では貯水槽の内径が56mあり、貯水槽周囲が法面になっている箇所が多く、クレーンが貯水槽全周に配置できない中での施工となりました。その為、クレーンの届かない箇所は、人力で資機材(仮設材・鉄筋型枠材・PC鋼材等)の運搬を行いました。
 また、コンクリート打設時もコンクリートポンプ車のブームだけでは打設箇所へ届かない為、配管を使用し、施工を行いました。

 4.施工内容

@ 底版工事
 基礎砕石(t=200)、均しコンクリート(t=100)施工後、底版鉄筋型枠の組立を行いました。
 冬季での施工の為、積雪対策として鉄筋組立が完了した箇所にシート養生を行い施工をしました。
 コンクリート打設は、生コンの数量が1,164m3と多く、プラント1社での供給では1日で打設する事が困難であった為、プラント2社から生コンを供給し、ポンプ車を2台使用して1日で打設を行い、漏水の原因となる打継目を省略しました。
 底版厚は中心のピットに向けて水が流れる様に、厚み500mmから300mmの勾配となっています。



写真-1 鉄筋型枠組立完了



写真-2 鉄筋シート養生



写真-3 底版コンクリート打設状況



写真-4 底版コンクリート打設完了

A 支承工事
 本工事では底版と側壁の間に自由支承構造が採用されていました。
 側壁下端部には、鉛直荷重を負担するゴム支承を配置し、それ以外の空隙部には縁切りの為、目地材を配置しました。
 また、地震時の水平力に抵抗する耐震ケーブル(PC鋼より線φ19.3)を配置しました。
 側壁と底版との可動部の止水は、円周方向にエンドレスのゴム止水板を2列配置して一次止水としました。ゴム止水板には水膨張ゴムを付加して、コンクリートとゴム止水板との接合面に沿った漏水を防止する様に配慮しました。
 また、補助的に弾性シーリング材を使用して二次止水を行いました。

図 -3 支承部断面図

図 -4 支承部正面図

写真-5 耐震ケーブル設置

写真-6 止水板設置

写真-7 ゴム支承・目地材設置

B 側壁・PC工事
 底版工事完了後、側壁・PC工事を施工する為に必要な内外足場を設置し、縦締めPC鋼棒・横締めPC鋼より線の配置、側壁鉄筋・型枠の組立を行った後、コンクリートの打設を行いました。
 側壁は高さが9.1mあるため、1リフト高さ1.8mを4段と、1.9mを1段の計5リフトに分けて打設を行いました。
 また、ポンプ車のブームが届かない部位の打設は、足場上に約30mの配管を設置してコンクリート打設を行いました。

写真-8 側壁鉄筋・型枠組立状況 写真-9 側壁コンクリート打設(配管打設)状況
写真-10 側壁コンクリート打設状況全景

 縦締めPC鋼棒はφ32(B種1号)を使用し、側壁上部から片引き緊張を実施しました。
 緊張本数は全数200本であり、2班で緊張作業を行いました。

写真-11 縦締めPC鋼棒建込み状況 写真-12 縦締めPC鋼棒緊張状況

 横締めPC鋼より線12S12.7(SWPR7BL)の挿入作業は、クレーンを使用して実施しましたが、クレーンを使用できない箇所の挿入作業は、人力での挿入ができる様に軽量化する為、1ケーブルが12本のストランドで構成されているPC鋼より線を4分割して、ストランド3本を1まとめとして人力で足場上を運搬して挿入し、これを4回繰り返して計12本挿入しました。

写真-13 横締めPC鋼より線挿入状況 写真-14 横締めPC鋼より線挿入状況

 横締めの緊張作業は、緊張機器ジャッキ・ポンプ各8台を使用して、1周を構成する4ケーブルを同時に18段72本の両引き緊張を行いました。

写真-15 横締めPC鋼より線緊張状況 写真-16 横締めPC鋼より線緊張状況

 縦締め・横締めPC鋼材緊張作業完了後、シース内にグラウト注入を行い、コンクリートとPC鋼材との付着を確保すると共に、PC鋼材を腐食から保護しました。

写真-17 縦締めグラウト注入状況(注入側) 写真-18 縦締めグラウト注入状況(排出側)
写真-19 縦締めグラウト注入状況(注入側) 写真-20 横締めグラウト注入状況(排出側)

C 内面防水工事
 側壁工事施工後、漏水対策として側壁内面全体に浸透性コンクリート改質剤の吹付を提案し、施工を行いました。
 また、漏水の危険性が高い木コン跡埋部・水平打継部には更にポリマーセメント系塗膜防水の施工を行いました。

写真-21 浸透性コンクリート改質剤吹付 写真-22 ポリマーセメント系塗膜防水材塗布

D 外壁塗装工事
 外壁は、ポリマーセメントにより下地調整を行い、弾性吹付タイルを塗布しました。

写真-23 下地調整材塗布状況 写真-24 弾性吹付タイル塗布状況

 5.おわりに

 本工事は内径56.0m、容量V=19,700m3と大規模な貯水槽の築造工事であり、当社においても施工実績が少ない工事でした。
 工事に際しては、特にコンクリートのコールドジョイントができない様に配慮して施工した結果、密実なコンクリートを打設することができました。
 また、冬季での施工の為、降雪の影響による工事中止期間があり、工期的にも厳しい中での施工となりましたが、発注者、元請け会社、協力工事会社のお力をお借りし、無事故無災害で工期内に工事を完了することができました。
 関係者の皆様には、この場をお借りして感謝致します。


写真-25 完成全景


写真-26 完成全景(航空写真)