No.39 二重管推進工法の開発

担当部所−東京支社

 1.はじめに
下水道をはじめとする管路の非開削埋設工法である推進工法は、適応範囲の拡大・コストダウン・路面交通への影響軽減などの社会ニーズに応え、今や管路の埋設工法になくてはならない存在になっています。
 また、近年では長距離・急曲線施工技術の開発によってその適応範囲を飛躍的に拡大し、長距離化の面では1スパン1000m以上の施工が要望されています。
 推進工法は、先導体の掘進機で前面自山を掘削し後続の推進管にて推進力を伝達して前進する工法であり、到達するまで管列全体が移動する工法です。
 そのため、推進中は推進管外周面を潤滑層として保持しなければならず、長距離化に伴う時間経過に対しては特に留意して、掘削外径を大きくしたり継続的な滑材注入や中押し装置の導入などによって対処している現状です。
 しかし、土質の変化や地下水の変動などの原因で推進管外周の状態を均一な潤滑層として長期間保持することは困難であり、推進工法の長距離化は理論(推力計算)上は半無限に可能であっても実施工的には1000m程度が限界と考えられています。
 ここでは、従来の推進工法では困難と考えられる1スパン1000mをはるかに超える長距離施工技術の開発と施工事例について紹介します。


 2.本工法の構成
本工法の基本的な構成は、推進管の外径に合わせて掘削径を変更できる掘進機と管径の異なる2種類の推進管および管外周の潤滑層を確実に保持するための滑材注入システムよりなっています。
 推進線形は使用する推進管の継手構造により異なりますが、外管に溶接継手の鋼管を使用する場合は少なくとも発進立坑側の二重管部分は直線として、それ以降の内管推進部分は曲線を設けることも可能です。


図−1 二重管推進工法概要
図−1 二重管推進工法概要


(1)掘進機

本工法に使用する掘進機に要求される性能としては下記のものがあります。


1.長距離推進施工
1スパンの推進距離が1000m以上になることも考慮して、掘進中は作業員が管内に立ち入る必要のない機械式密閉型の掘進機構を備えた遠隔操作型の掘進機を基本とします。
また、排土および管内残土搬送についても同様に機械的に連続排土可能な機構とします。
2.掘削外径の変更
路線前半の外管推進部と後半の内管推進部では推進管外径が異なるため、不必要な余掘りを行なったり必要な掘削径を確保できなかったりしないため、適宜掘削外径を変更する必要があります。
そのため、推進途中で掘進機のカッタの切削外径を遠隔操作で変更できる機構を備えます。
3.内管および掘進機のスムーズな抜け出し
掘進機は外管推進時には外管と緊結された状態で推力を受け、内管推進開始時には内管によって推力が伝達されてスムーズに押し出される機構が必要です。
そのため、機内から着脱可能な特殊アダプターを掘進機後端部に装備します。
写真−1 掘進機
写真−1 掘進機
(2)推進管

本工法で使用する推進管のうち内管は推進管として一般的なヒューム管を使用し、外管は基本的に鋼管を使用します。
 その理由としては、内管推進時と外管推進時の切削外径の差を出来るだけ小さくして不必要な掘削をせず、なおかつ土圧・水圧などに対して十分な安全を確保するためです。
 外管内面は内管のスムーズな通過のためできるだけ平滑でなければならないため、継手は突合せの溶接継手にします。
 二重管の隙間(内管外径と外管内径の差)は出来るだけ小さく設定しますが、土荷重などによる外管の歪・外管および内管の製作誤差などに余裕を加えて決定します。
 また、先頭管には内管との隙間から土砂などの流入を防ぐためのパッキン(ワイヤーブラシ)を取り付けます。


(3)滑材注入
本工法の二重管部では土荷重は外管によって保持され内管には影響を及ぼさないため摩擦抵抗は各段に小さくなり、滑材の損耗・希釈もほとんど発生しないと考えられます。
 二重管部の隙間には高粘性の滑材(アルティクレイ)を事前に封入し、内管推進時には若干の補足程度で十分です。
 また、外管推進時の推進抵抗については留意する必要があるため、自動的に滑材注入を継続しなければなりません。
 
図−2 自動滑材注入装置
図−2 自動滑材注入装置
そのため、先頭管からの1次注入と後続の管列からの二次注入を併用して管外周部の潤滑層を確実に保持するとともに、外管推進が完了すれば直ちに裏込め注入を行ない周辺地盤の安定を図ります。
 路線後半の内管推進部も同様に自動滑材注入システムを使用して管外周潤滑層を確実に保持します。


 3.施工事例

写真−2 施工位置
写真−2 施工位置
 (1)工事概要
  • 工事名:帝石入間ライン延伸建設工事(荒川横断工区)
  • 発注者:帝国石油株式会社
  • 工期(推進工):2004年8月〜12月
  • 施工概要:呼び径 1000mm
  • :延長L=1265.03m
  • :土被りH=17m〜24m
  • :土質砂および砂礫
  • 工法:泥水推進工法
 (2)当工事の特異性と事前検討
本工事は帝国石油株式会社の入間ライン建設工事の中で、1級河川の荒川を横断する部分について推進工法にてさや管を埋設する工事です。
 1スパンの推進距離は1265.03mになり、地上部はゴルフ場・河川・多目的グランドなどになっているため、万一の場合でも地上部を掘削することは到底不可能な条件です。
 推進部の土質は砂および砂礫土と想定されますが、過去の荒川の氾濫の歴史などを考えると巨礫や粘性土・流木などの存在も考慮しなければなりません。
 また、推進完了後にパイプライン本管(鋼管)をFT工法にて水平に押し込むため、推進精度は全路線にわたってセンターおよびレベル保持が要求されます。
 以上のような特異性を考慮して当工事においては二重管推進工法を採用するとともに下記の項目について事前検討を行ない、従来工法より各段の低推力で安全・確実な施工を目指しました。


1.推進管
当工事に使用する推進管のうち、内管はさや管としての機能と経済性を考慮して呼び径1000mmヒューム管(外径1200mm)として、外管は掘削外径の差を極力少なくするため鋼管を採用します。
鋼管径および管厚は外圧荷重(土圧・水圧)による歪・推進抵抗を受けるための必要断面積・内管挿入のクリアランスなどを考慮した必要最小値とします。
拡幅時掘削外径:1350mm
鋼管外径:1300mm
内径:1262mm(厚さt=19mm)
内管との隙間31mm
図−3 推進管断面図
図−3 推進管断面図

当工事に使用する推進管のうち、内管はさや管としての機能と経済性を考慮して呼び径1000mmヒューム管(外径1200mm)として、外管は掘削外径の差を極力少なくするため鋼管を採用します。 鋼管径および管厚は外圧荷重(土圧・水圧)による歪・推進抵抗を受けるための必要断面積・内管挿入のクリアランスなどを考慮した必要最小値とします。 拡幅時掘削外径:1350mm 鋼管外径:1300mm 内径:1262mm(厚さt=19mm) 内管との隙間31mm 2.掘進機 推進部の土質は砂および砂礫層であり地下水圧は2.0Mpa以上になることも予想されるため、推進工法としては泥水推進工法を採用し掘進機前面での礫破砕機構を装備しています。 外管推進時と内管推進時の掘削外径の差については外周部に3個のコピーカッタを装備し、内管押出し時にはコピーカッタを縮めるとともに機内より鋼管アダプターの固定ボルトを取り外して離脱します。 カッタビットの長距離施工に伴う摩耗については、想定摩耗量に対して余裕のある刃先チップを備え、礫との衝突による欠損を生じない形状を選択しています。



図−4 掘進機
図−4 掘進機

3.精度確保 推進管の精度を確保するため、掘進中の姿勢制御と推進管1本毎の精度測量結果による方向制御を併用します。 掘進中の姿勢制御は、掘進機に装備したジャイロコンパスによって方位(ヨーイング)と傾斜(ピッチング)を常時テレビモニターで監視し、誤差を常時修正します。 推進管1本毎の精度測量は人的過誤を防止するためと測量時間を短縮するため、自動測量システム(自動追尾トータルステーション)にて行ないます。 また、現地は堤防・河川・グランドなどによって見通しのきかない状況のため、発進時の基線設定には特段の精度を確保するともに掘進途中においても光学的チェック測量を複数回実施します。
表−1 推力図(HP推進時)
表−1 推力図(HP推進時)
表−2 推力図(鋼管推進時)
表−2 推力図(鋼管推進時)
表−3 推力図(HP挿入時)
表−3 推力図(HP挿入時)
表−4 水平精度図
表−4 水平精度図
表−5 縦断精度図
表−5 縦断精度図



(3)施工状況と実績
推進工施工前に品質および実証試験として、推進管(ヒューム管・鋼管)の材料検査および掘進機の工場試験を行なって性能確認しました。
 特に、二重管推進の特徴である外管からの内管の抜け出し作動については地中での挙動を推定するため、掘進機およびアダプターリングの実機を使用して地上にて実証確認しました。
 現場施工については、予想をはるかに下回る低推力(初動推力320T・通常推力152T)で到達し、到達精度についても良好な結果となりました。
写真−3 外管から内管の抜け出し作動
写真−3 外管から内管の抜け出し作動
 4.終わりに
従来の推進工法では種々の問題点が懸念される1スパン1000mをはるかに超える長距離施工も本工法の開発で十分可能であることが実証されました。
 さらに、その応用として推進路線直上に存在する重要構造物への影響を懸念することなく長距離施工が行なえることが確認できました。
 今後はこの結果をもとに本工法を一般化するとともに多様な応用化を図って行きたいと考えています。
 最後に、本工法の採用・実施に対してご協力を頂いた関係各位に心から感謝申し上げます。
写真−4 到達状況
写真−4 到達状況