No.34 海水淡水化施設導水管推進施工報告

担当部所−福岡事務所
担 当 者−北島 邦浩

 1.事業目的
人口や産業が集中する福岡都市圏では、 近年の水需要の増加や不安定な気象状況などから新しい水資源の開発が課題となっています。 その水不足打開策の一つとして、新たな水資源を海に求め、気象に左右されることなく安定的に水量を供給できる、 海水淡水化施設整備事業に着手する事になりました。

 2.事業概要
当事業の海水淡水化施設は、福岡市東区奈多の海岸沿いに建設されます。 建設現場は、福岡市の天神から直線距離で約10kmの至近な立地で、休日には観光客やレジャー客が数多く訪れる「海の中道」エリアの豊かな自然環境に恵まれた所です。
 当施設は環境に配慮した整備が進められています。地上部分の建物は、軽量化と強度に重点を置き、 地震に強い構造にすると共に、周辺環境との調和を考慮した外観デザインになります。取水施設には新技術の「浸透取水方式」が採用されています。 現在、日本国内に数十箇所ある海水淡水化施設の中では、最大規模のもので、福岡都市圏に日量5万tの水道用水供給が可能となり、 2005年度の供給開始を目指し設計・施工されています。当社はこの中で、導水管推進をアルティミット工法泥水式で施工しました。

 3.工事概要

工 事 名 : 海水淡水化施設整備事業
「プラント施設及び取水施設」工事
現場全景
写真−1 現場全景
企 業 者 : 福岡地区水道企業団 海水淡水化事業課
設計・施工者: 大林組・協和機電工業建設工事共同企業体
建 設 場 所 : 福岡県福岡市東区大字奈多地内
敷 地 面 積 : 約46,000m2
構造・階数: 鉄骨造 地上2階建て
施 設 規 模 : 50,000t/日
取 水 設 備 : 浸透取水方式
プラント設備: 逆浸透水方式
全体計画平面図
図−1 全体計画平面図 全体計画断面図
図−2 全体計画断面図
 4.導水管推進概要
呼び径1580 アルティミット長距離泥水式推進工事
推 進 延 長 陸側:358.06m 発進立坑〜取水井 I=0(勾配0)
海側:809.24m 発進立坑〜集水桝 I=1.2%下り
掘 進 機 陸側・海側:DTK-150-704(長距離対応型機)
管   種 レジンコンクリートRM管(ステンレスカラーSUS316)
内径1580 L=2,430mm
陸側:147本
海側:331本
中押しS・T管(ステンレスSUS316)
内径1580
陸側:1組
海側:3組
ゴム輪 止水機動型幅広ゴム輪
陸側:148本
海側:332本
特殊中押しゴム輪(三段式)
陸側:3本
海側:9本
元 押 設 備 200t×3,000st×6台
中押し設備 自動中押しシステム
陸側:30tf(300kN)×300st×20台(一段)
海側:30tf(300tN)×300st×20台(三段)
注 入 設 備 自動滑材充填システム(アルティーK)、
アルティークレイ充填システム(アルティークレイ)
陸側:自動滑材充填システム(アルティーK)
海側:自動滑材充填システム(アルティーK)、
アルティークレイ充填システム(アルティークレイ)併用
泥水処理設備 一次処理設備(2.0m3
アルティミット掘削土砂管理システム
送排泥設備工 アルティミット工法用2連型泥水ポンプ
測 量 管 理 自動測量システム、リアルタイム計測システム
液圧差レベル計測装置、ジャイロナビゲーションシステム
土   質 陸側:粘土混じり細砂 N値5〜20
土被り 10.1〜10.6m
地下水位 GL−2.9m
海側:細砂 N値5〜40
土被り 3.5〜13.3m
地下水位 GL−2.9m

5.導水管推進施工
 5.導水管推進施工
施工は、陸側・海側とも大きいトラブルも無く順調に終える事が出来ました。今回は、陸地から約650m沖合の集水桝ケーソンに到達させ、 掘進機を水中で回収するという珍しい海側海底推進施工について報告いたします。

1)掘削管理
海底推進では、海底部に入り土被りが3.5m程となるため、土砂の取り込み過ぎと泥水の海中への逸水が課題となりました。 その対策として、掘削土量の管理は、アルティミット泥水掘削土量管理システムにより、又、 泥水逸水の管理は、潮時表の日々時間毎の海面高さに応じた泥水圧を設定することにより行いました。 以上の管理により、土砂の取り込み過ぎも泥水の逸水も無く推進する事ができました。 中央集中管理室
写真−2 中央集中管理室
2)進力管理
海底部では、地下水塩分濃度が高く、滑材が塩分により劣化し、推進抵抗力の増加、日進量の低下が考えられました。 推進抵抗力の増大は最悪の場合、推進不能となるおそれもあります。その対策として、 中押し設備を三ヶ所設置しました。又、一次注入として、耐塩性に優れている超高粘性滑材アルティークレイを、 アルティークレイ充填装置で切断筒より先端に充填を行ない、二次注入として、アルティーKを、 自動滑材充填装置で70mピッチにグラウト孔より注入を行ないました。又、アルティーK耐塩添加材も使用しました。 以上の結果、到達時での緑切推進力780tf(7800kN)・実績推進力400tf(4000kN)で、 中押し設備を使用すること無く到達する事ができました。 アルティミット滑材充填システム
写真−3 アルティミット滑材充填システム
3)精度管理
 集水桝ケーソンの掘進機到達位置は、呼び径2200の箱抜き部としたため、精度管理は入念に行いました。 ジャイロを掘進機に搭載し、液圧差レベル計測装置と共にリアルタイムに計測を行ないました。 又、自動測量システムで、掘進後に計測を行なっていましたが、推進管のレジンコンクリート管内面が鏡のような仕上がりのため、 赤外線レーザーが反射しエラーが続出し、最終的には人力による手動計測を実施しました。以上の管理の結果、 無事集水桝ケーソン呼び径2200の箱抜き部へ到達する事ができました。写真−4 管内 管内
4)掘進機水中到達・水中回収
掘進機と推進管を水没させる事無く掘進機を回収するために、掘進機と推進管の間に、 掘進機側と推進管側にハッチを取り付けた切断筒を設け、推進を行いました。
回収の手順は次の通りです。
回収作業
写真−5 回収作業
  1. 掘進機が集水桝ケーソンに到達後、位置を確認。
  2. 坑口部(箱抜き部)でゴム製キャンバーを使い掘進機を固定した後到達架台を調整。
  3. 掘進機を押止めの位置まで押し出す。押し出しの際には集水桝ケーソン上部に取付けたクレーンビームの、 ギヤトロリー付チェーンブロックで、掘進機を吊りながら押し出し。
  4. 掘進機内部の配管配線を撤去。
  5. 切断筒内の両方のハッチを閉め、切断筒内に推進管側から注水。
  6. 潜水夫が切断筒をリング状に切断し、クレーン船にて掘進機を回収。

この手順により、掘進機と推進管を水没させる事無く、掘進機を回収する事ができました。

 6.あとがき
掘削と・推進力・精度管理を確実に行なうことで、1km以上の超長距離推進の可能性が実証できたと考えます。
 当工事のような、貴重な海底推進工事を施工する事が出来たことを有り難く思い、私にとっても大変良い経験に成りました。
 最後に、本社技術本部・土木本部の方々の御協力・御尽力のおかげで無事工事が完了することが出来ましたことを深く感謝するとともに、 当工事での経験が、今後の同様な海底長距離推進の工事に役立つ事を願います。

トンネルと地下 2003年1月号(土木工学社刊)に、 「海底下の長距離推進と掘進機の引き揚げ 福岡地区水道企業団、海水淡水化事業」(福岡地区水道企業団・大林組と連名)」が掲載されています。