No.251 宮城県北部地震におけるPCパネタンク調査報告

PCタンク研究会

 1.はじめに

2003年7月26日、0時13分頃、宮城県北部を震源とするマグニチュード5.5(震源の深さ12km)の地震が発生し、宮城県鳴瀬町小野、矢本町矢本で震度6弱を記録しました。
 同日7時13分には、ほぼ同じ場所を震源としてマグニチュード6.2(震源の深さ12km)の地震が発生し、宮城県鳴瀬町小野、矢本町矢本、南郷町木間塚で震度6強を記録しました。
同日16時56分にもほぼ同じ場所を震源としてマグニチュード5.3(震源の深さ12km)の地震が発生し、宮城県河南町前谷地で震度6弱を記録しました。
 地震による災害は、道路面の亀裂、陥没は無数あり、家屋の倒壊も多く、今回の地震の大きさを物語っています。
 宮城県内には、弊杜が築造したPCタンクが4基あることから、阪神大震災と同様に速やかに調査担当者を現地に派遣し、地震の影響や経年変化について迅速に調査を行ない、関係部署に調査報告書の提出を行いました。
 以下に、その内容について紹介いたします。

 2.PCタンクの設計仕様

(1)名取市 みどり台配水池 (3)JR東日本 仙台新幹線基地工水受水槽
  • 完工年月:平成7年10月
  • 形  式:固定工法(同心円)
  • 容  量:800m3
  • 内  径:11.30m、16.40m
  • 有効水深:4.00m
  • 完工年月:昭和54年8月
  • 形  式:プレロード工法(同心円)・(弾性支承)
  • 容  量:3000m3
  • 内  径:19.10m、27.10m
  • 有効水深:5.50m
(2)仙台市 加茂配水池 (4)利府町 簡易給水施設事業配水池
  • 完工年月:昭和53年3月
  • 形  式:プレロード工法(弾性支承)
  • 容  量:2000m3
  • 内  径:18.00m
  • 有効水深:8.00m
  • 完工年月:昭和54年5月
  • 形  式:プレロード工法(同心円)・(弾性支承)
  • 容  量:1500m3
  • 内  径:13.50m、19.30m
  • 有効水深:5.50m

 3.調査報告

調査は、地震時による影響、経年変化による影響について行ないました。
1)調査の内容
 調査方法は目視による外観調査を主体に、壁体・屋根・PC定着部の本体構造物の状況調査、昇降設備、手すり、避雷針等の付属物の状況調査について行ないました。
2)調査結果
 以下に、関係部署に報告した調査結果を記載します。

(1)名取市 みどり台配水池

1)−1.地震時の影響

異常は見られなかった
2)−2.経年変化によるもの

現状で特に問題はなかった

◎付 属 物◎
点検箇所
避 雷 針 電 気 室
排 水 管 ポンプ室
人  孔 弁  室
換 気 孔 配管設備
水 位 計 排 水 溝
手  摺 場内舗装
昇降設備
−:項目なし ○:異常なし ×:異常有り
◎本体構造部◎
点検箇所 基礎・床版 壁体 屋根 PC定着部
ひび割れ
剥  離
鉄筋露出
漏  水
遊離石灰
塗  装
防  水
補修経歴 なし

みどり台配水池 みどり台配水池
外部状況 異常なし

壁体下部とドームリング部の一部に雨水等による汚れが見られましたが、本体及び付属物には現状では問題がありませんでした。

(2)仙台市 加茂配水池

1)−1.地震時の影響

異常は見られなかった
2)−2.経年変化によるもの

現状で特に問題はなかった

◎付 属 物◎
点検箇所
避 雷 針 電 気 室
排 水 管 ポンプ室
人  孔 弁  室
換 気 孔 配管設備
水 位 計 排 水 溝
手  摺 場内舗装
昇降設備
−:項目なし ○:異常なし ×:異常有り
◎本体構造部◎
点検箇所 基礎・床版 壁体 屋根 PC定着部
ひび割れ ×
剥  離 ×
鉄筋露出
漏  水
遊離石灰 ×
塗  装
防  水
補修経歴 なし あり 外部塗装

加茂配水池 加茂配水池
外部状況 異常なし

屋根部仕上モルタルの一部にひび割れ、剥離が見られますが、現状では特に問題はありませんでした。

(3)JR東日本 仙台新幹線基地工水受水槽

1)−1.地震時の影響

異常は見られなかった
2)−2.経年変化によるもの

現状で特に問題はなかった

◎付 属 物◎
点検箇所
避 雷 針 電 気 室
排 水 管 ポンプ室
人  孔 弁  室
換 気 孔 配管設備
水 位 計 排 水 溝
手  摺 場内舗装
昇降設備 × 錆点在
−:項目なし ○:異常なし ×:異常有り
◎本体構造部◎
点検箇所 基礎・床版 壁体 屋根 PC定着部
ひび割れ
剥  離
鉄筋露出
漏  水
遊離石灰
塗  装
防  水
補修経歴 なし あり 外部塗装

JR東日本 JR東日本
外部状況 異常なし  付属物/螺旋階段

付属物の外部螺旋階段には、錆が発生していましたが、本体及び他の付属物は特に問題がありませんでした。

(4)利府町 簡易給水事業配水池

1)−1.地震時の影響

異常は見られなかった
2)−2.経年変化によるもの

現状で特に問題はなかった
◎付 属 物◎
点検箇所
避 雷 針 電 気 室
排 水 管 ×
取付金具錆
ポンプ室
人  孔 弁  室
換 気 孔 配管設備
水 位 計 排 水 溝
手  摺 場内舗装
昇降設備 × 錆点在
−:項目なし ○:異常なし ×:異常有り
◎本体構造部◎
点検箇所 基礎・床版 壁体 屋根 PC定着部
ひび割れ ×
一部亀甲状
剥  離
鉄筋露出
漏  水 ×
亀甲状跡
遊離石灰
塗  装
防  水
補修経歴 なし あり 外部塗装 なし

利府町 利府町
外部状況 異常なし / 外部調査 モルタルの中性化試験:良好

本タンクは、吹き付けモルタルの中性化調査も実施し、PC硬鋼線への影響も調査しましたが異常ありませんでした。
 壁体吹付モルタルの一部に亀甲状のひび割れ、付属物である雨樋振止金具、外部螺旋階段に錆が発生していましたが、現状では特に問題はありませんでした。

 4.あとがき

水道は、国民生活や産業経済活動に欠くことのできないライフラインとしての使命を果たすために、地震や渇水にも強い高水準な施設整備を提供することが重要となります。
 近年、トイレの水洗化をはじめとする生活様式の変化から、水道水の使用量も増加し、安全で安定した水道水の供給が求められており、PCタンクはこのための施設として、かかせないものになっています。
 今回の地震に対して構造的に問題がなかったことは、PCタンクが高水準な施設であることを実証できたものと考えています。 特に、昭和53年にプレロード工法で築造されたタンクには、25年という歳月を経ているにもかかわらず、地震による影響が全く見られませんでした。このことは、耐震性を取り入れた弾性支承の効果ではないかと考えられます。
 今後も、緊急時における速やかな調査や対応を行ない、国民生活にとって重要なライフラインの安全性のな確保に努めていきたいと思います。