No.249 隠岐に渡ったアルティミット工法(小口径アルティミット工法の施工報告)

技術本部 技術部 山本浩二

 はじめに

近年、都市圏の過密化や施工周辺の環境保全等の対策から、長距離、急曲線推進、省面積立坑からの発進・到達などを可能とする推進工法の技術開発が望まれてきました。 特に、下水道整備事業が大都市から地方の中小都市へと移行することによって、小口径管での推進工法の需要が非常に多くなってきています。
 当社はこの要望にお応えするために、長距離、急曲線推進を安全確実に施工できる小口径管推進に対応したアルティミット工法のシステムを開発しました。
 本文では、小口径アルティミット工法の推進工法の中での位置づけ、特長、主要なシステムについて説明いたします。 また、小口径アルティミット工法の第1号工事を無事完了することが出来ましたので、施工事例として報告いたします。


 2.工法の位置づけ

本工法の位置づけは、小口径管推進工法の高耐荷力方式の泥水方式と土圧方式に分類され図−1の様になります。

工法の位置づけ
図−1

 3.工法の適応範囲

本工法の適応管径は、推進工法用鉄筋コンクリート管の場合、呼び径 300〜500mmとなります。適応推進延長は、各土質により表−1の様になります。

土質 推進延長(m)
A土質 シルト・粘土 250
砂・礫混じり土 200
B土質 砂礫土
硬質粘土 250
C土質 玉石混じり砂・砂礫 130
D土質 巨礫混じり土
表−1

 4.工法の主要なシステム

本工法の主要な技術、システムは、大きく分けて以下の4つの課題に対応するために開発されました。

(1)地中環境の保全への対応技術
a.泥水式掘削管理システム
(2)急曲線推進への対応技術
a.曲線造成システム
b.送排泥二重管
c.センプラカーブシステム
(3)品質・精度管理への対応技術
a.中央集中管理システム
b.直線区間精度管理システム
c.曲線区間精度管理システム
(4)その他の技術
a.小立坑からの発進・到達
b.コーン内洗浄機構
c.注入滑材(S2K)

 5.施工事例
(1)工事概要
・施工場所:島根県隠岐郡
・工  法:泥水1工程(分割型)
・呼 び 径:450mm
・推進延長:L=129.6m
・土  質:砂礫・粘性土
・最大礫径:φ500mm 
・土 被 り:1.6〜1.9m
・発進立坑:2,500mm円形ライナープレート
・到達立坑:1,600mm円形ライナープレート 
(2)施工上の検討課題
a.小土被りでの推進管理
b.到達付近で出現する岩盤への対応
c.長距離推進への対応
推進路線平面図
図−2 推進路線平面図
(3)検討課題への対策
a.小土被りでの推進管理(地中環境保全)
土被りが比較的少ない場合、地中での土砂取り込みの過不足の影響がすぐ地表に表れることがあります。
 泥水閉塞の場合は、泥水奮発、地表の隆起、また、掘削土の取込みすぎが発生した場合は、沈下、陥没といった大きなトラブルが発生します。
 そこでこの工事では、適正な掘削土量を管理するために、泥水式掘削管理システムを採用しました。 泥水式掘削管理システムは、流量計を使用して単位時間当たりの送・排泥量差を演算することによって、掘削土量(土量率)を算出する泥水工法でしか実現できないシステムです。
 また、粘性土によるコーン閉塞を防止するためコーン内洗浄機能を有している互層土質対応型掘進機を採用しました。
b.到達付近で出現する岩盤への対応
土質は、砂礫が主体でしたが発進、到達付近で非常に硬い岩盤の出現が予想されました。
 また、立坑掘削時に300〜400mm前後の転石、巨礫も確認されました。
そこで掘進機は巨礫・岩盤対応型面板を選定しました。 この掘進機面板には、十字方向に大小2種類のツーコーン型ローラービットが配置され、巨礫に対して効率的で、強力な破砕性能を発揮することが出来ます。
立坑掘削時に出現した巨礫 互層土質対応型掘進機
写 真−1
立坑掘削時に出現した巨礫
写真−2
互層土質対応型掘進機
(巨礫・岩盤対応型面盤)
c.長距離推進への対応
排泥ポンプ
写真−3 管内に設置された排泥ポンプ

本工事の推進延長は、129.6mと長距離推進になっています。 長距離推進を実現するには、推進力の低減が工事の成否の鍵を握る重要な課題となることは当然ですが、推進精度の確保、掘削土の流体輸送の長距離化にも対応する必要がありました。
そこで、推進力低減には、小口径管の長距離推進を可能とするために開発された一液性滑材S2Kを採用しました。
一方、精度管理については通常の直線区間精度管理システム(レーザセオドライト)を採用しました。 ただし、レーザセオドライトは、推進管内の温度変化による光の屈折が発生し、それが大きな誤差を生む可能性が予想されました。 そこでレーザセオドライトと共に曲線区間精度管理システム(液圧差レベル計、電磁誘導装置)を採用し、相互の精度管理を行えるようにしました。
また、泥水の長距離輸送化に対しては、小口径管内に設置可能でレーザセオドライトの光を妨げる事がない低床型の専用排泥ポンプを製作し採用しました。
(4)施工結果
前記3項目の対策を周知徹底させて 実施することによって、推進工事を低推進力で精度よく完了することができました。 以下に、各項目の施工状況、結果について報告させていただきます。
推進路線
写真−4 推進路線
(非常に狭い国道での推進施工)

a.小土被りでの推進管理(地中環境保全)
泥水式掘削管理システムの採用により、適正な掘削土量(土量率)を管理することができました。 一部、流木等の出現により泥水還流が乱れることがありましたが、その状態も簡単に確認することができました。 当初、地表面への泥水の影響が懸念されましたが、路面には全く影響を与えることはありませんでした。
b.到達付近で出現する岩盤への対応
実際は、予想以上に転石が多く、当初計画した日進量の確保に苦労しましたが、転石、岩の破砕がスムーズに行えていることが掘削排土から確認することができました。 到達時、面板、ビットに損傷は見られず、強力な破砕性能を発揮していることが再確認されました。
c.長距離推進への対応
電磁誘導装置
写真−5 電磁誘導装置
(モールキャッチャー)

推進路線は、予想以上に透水性が高い砂礫地盤でしたが、一液性滑材S2Kは効果的に働き、推進開始時から低推力で施工完了することができました。
このことからS2K地盤への逸失はほとんど無かったと考えられます。
一方、精度管理は、レーザセオドライト、液圧差レベル計、電磁誘導装置(モールキャッチャー)を併用することにより相互確認が行え安定した精度管理を行う事ができました。
また、管内泥水の長距離輸送化に対して設置した専用の排泥ポンプは、到達まで充分な還流能力を発揮することができました。
グラフ−1 推進力の推移
グラフ−1 推進力の推移

 7.おわりに

小口径アルティミット工法は、まだ産声を上げたばかりですが、今後、推進実績100kmのアルティミット工法の技術、ノウハウを生かし、小さな"究極"を目指す必要があると思われます。
 小口径アルティミット工法が、今後、都市管路敷設工法の選択肢の一つとなるよう、さらなる工法の改良、改善を図っていく所存であります。
 最後に、今回の工事、施工に当たり、ご指導いただいた皆様に、深く感謝申し上げます。

写真−6 推進機吊降し状況 写真−7 初期掘進状況 写真−8 到達状況
写真−6 推進機吊降し状況
(呼び径2500mm発進立坑)
写真−7 初期掘進状況 写真−8 到達状況