No.243 ULISのシステム技術「アルティークレイ」で巨礫地盤推進、
 透水係数1×10-1cm/secの玉石混じり砂礫層を長距離推進

東京事務所 新改 洋一
中村 光伸

このほど、玉石混じり砂礫層において、延長約720mの推進工事を、計画推力内で無事到達することができましたので、そこで使用した、 中性で安全な超高粘性滑材「アルティークレイ」についての概要説明なども兼ねて、施工報告をいたします。

写真−1
アルティークレイ(PAT.P)二種液混合後
アルティークレイ(PAT.P)二種液混合後
 1.超高粘性滑材「アルティークレイ」について

アルティークレイは、主材(A材)と、調合添加材(B材)とを、注入孔の直前で1:1で混合して注入する、中性で安全な二液性の推進工法用滑材です。 混合後は、流動性のある高粘性(16,000mPa・S)の物質(ホモゲル体)になり、推進管と地山との間の空隙部(テールボイド)に、これを充填することによってその崩壊を防止し、管周抵抗を低減します。
 またアルティークレイは、地下水中のナトリウムイオン(塩分)などの金属イオンに影響されにくく、長期間高粘性を維持し、また地盤から受ける圧力に対しても高い強度を発揮するので、特に、地下水の多い砂礫地盤での長距離推進や、地下水に塩分を含む海岸近辺での推進などにおいて推進力の低減に効果を発揮します。

 2.アルティークレイの性能

アルティークレイの基本性能は以下のとおりです。

  •  中  性
  •  安 全 性:ヒメダカを使った急性毒性試験などにより確認
  •  粘  性:16,000mPa・s
  • ゲルタイム:数秒・外観:黄白色
  •  特  性:低摩擦係数、高粘性、低浸透性、低濾水性、低希釈性(高耐イオン性)
  •  注入方法:基本的に1次注入のみでよい(追加注入も可能)
  •  対象土質:全土質。特に砂礫(礫率50%以上、透水係数10-2cm/sec以上)、
  • 海岸近辺などの、地下水に塩分が含まれる地盤に有効
 3.アルティークレイを導入した現場の工事概要 (砂礫地盤における施工事例)

  •  掘進工法:泥濃式推進工法 延長L=720m(直線)
  •  土  質:玉石混じり砂礫土
  • (礫率70%、砂分20%、シルト粘土分10%)
  •  礫  径:750〜1,200mm
  •  透水係数:1×10−1〜10−2cm/sec
  •  土 被 り:6〜7m
  •  地下水位:GL-5〜6m
  •  推 進 管:呼び径1,000mm
  • (管外径1,200mm、推進工法用ダクタイル鋳鉄管)
  •  設計勾配:−0.18%
写真−2
写真−2
アルティークレイ混合器(PAT.P)

アルティークレイ混合装置
アルティークレイ混合装置

 4.推力および滑材注入管理

本現場の掘進機は、推進管より35mmオーバーカットするため、テールボイドは計算上、0.136m3/mで、推進管1本当り0.136×2.435=0.330m3となります。 この数値が滑材注入量管理の基準となります。
 上記工事概要にもあるように、本現場の土質は、透水係数の非常に高い、玉石混じりの砂礫土で、施工計画時より滑材の地山への逸失と推力の増大が懸念されていました。
 そこで、当社で開発した超高粘性滑材アルティークレイの使用を検討し、準備しました。
 初期掘進から管No.26までは、アルティークレイの特性がよく把握できていなかったこともあり、注入率約40〜50%程度で推進しました。
 そのうちに推力が計画の倍ほどに上がり始めました。約230m地点で推力増大の原因と対策を協議した結果、滑材注入量の不足も要因ではないかとの指摘があり、不足分を補うために約12.750m3のアルティークレイを注入したところ、 200tf近い推力の低減のが得られました。 (グラフ Aゾーン)
 この時、グラウト孔から滑材をサンプリングしてみると、ゲル化したアルティークレイが、少し圧力のかかった状態で出てきました。 アルティークレイのこの状態が推力低減に効果的にはたらいていたのではないかと考えられます。
 それ以後は、注入量に不足がないように特に注意をはらいました。具体的には、管1本当たりの設計注入量、0.330m3×0.85=280リットルに対して、 約400リットル(注入計画量の約1.4倍)を目安に滑材注入をするようにしました。 (グラフ−2 Bゾーン)

推力グラフ
アルティークレイ充填率=アルティークレイ充填量÷テールボイド要領×100 推力グラフ
※二次注入:一次注入の位置より約20m後方で追加注入

通常推進時の推力は、途中何回か設計推力を超過しましたが、その都度追加注入を施すなどして、全体的には設計推力を下回りながら推進することができました
 縁切り推力(最小)と通常推力(最大)については、推進の常識とは異なり、押しはじめが軽く、だんだん重くなってきました。 その原因については不確定ですが、一因として、地山(玉石)と使用した推進管(推進用ダクタイル鋳鉄管)の外装板との接触状況の変化が考えられます。
 全スパンを通した推力の推移はグラフのとおりです。アルティークレイの充填率を上げたタイミングと推力低下の状況がよく一致していることが読みとれると思います。
 本工事では、テ−ルボイドに充填した滑材をできるだけこまめにサンプリングして、その性状変化をチェックするようにつとめました(写真−3参照)。 サンプリングの結果、粘性が少し落ちていたものの、性能的には問題のない、良好な状態でテールボイドに長時間存在することが確認されました。

注入孔で確認されたアルティークレイ 写真−3/注入孔で確認されたアルティークレイ

 5.おわりに

本工事は、土質が、玉石混じり砂礫土(礫率70%、砂分20%、シルト粘土分10%、玉石の径が750〜1,200mm)で、透水係数も1×10-1〜10-2?/secという過酷な条件下での推進工事でした。
 通常推力は、最終的に約0.71tf/m(約0.19tf/m2以下)でした。
 全体をとおして、地山(玉石混じり砂礫)と推進用ダクタイル鋳鉄管の継ぎ手部の構造の問題が、推力の上昇に複合的にかかわっていたものと想定され、この要因がなければ、推力は採取デ−タより更に低いものであったと思われます。
 また本工事では、結果的にビット交換などにより、推進開始から完了まで約165日間という長期間、テールボイドを良質な滑材で充填しておく必要がありました。 この点に対しても、使用性がよく品質が安定しているアルティークレイが、確実に推力の低減と周辺地盤への影響をなくすという効果を発揮するということが実証できたと思います。
 推進工法においては、(1)土質にあった滑材を選定して、 (2)テ−ルボイドの滑材の状態を常にチェックしながら、 (3)滑材をテ−ルボイド容量に対して100%充填し、(4)推進精度管理を適切におこなえば、推力は確実に低減できると思います。
 そして、環境問題が重視される昨今、地中残存物となる滑材の地下水への溶出が懸念され、安全性は特に重要になってくると思われます。
 強アルカリ性の可塑剤などをできるだけ使用せずに、中性で、安全性の確認されたアルティ−クレイ、アルティーK、S2Kという、ULISを構成する滑材は、周辺地盤環境を保全するという観点からも顧客に充分にその特長をアピ−ルできると考えます。