通巻No.233 大河を横断したアルティミット工法

竹内俊博/森山輝夫/徳永幸衛

平成13年11月21日、中央大学駿河台記念館で、第12回非開削技術研究発表会が開催されました。当社も第3セッションの「推進工法関連の施工例」に、アルティミット工法の概要と施工事例を発表いたしました。 大河横断という特殊な施工例が報告されていますので、紙面の都合上その部分の工事実績のみを抜粋して掲載させていただきます。

 1.大河川横断の推進工事実績

1.1 工事事例−1
(1)工事概要
 本工事は、東京湾に面した東京電力大井火力発電所と品川火力発電所間を流れる若草運河下に、品川火力発電所の新設に伴う燃料(ガス)供給用の配管ルートを確保するための呼び径3000の推進工事である。

  • 工事件名:品川火力発電所1号系列新設工事
  • 工事場所:東京都内
  • 推進管径:呼び径 3000(ヒューム管)
  • 推進延長:255.1m
  • 土 被 り:11.0m
  • 土  質:砂質シルト
  • N  値:2前後
  • 曲 線 部:R=688m(縦断)

管内状況
管内状況

(2)施工上の課題と対策

a.推進線形の変更
当初は、運河西岸の鋼矢板護岸の下端から推進管の外径分の離隔を確保して水平推進施工で計画されていた。
しかし、発注者側からコストダウンできる推進施工の意向が示された。
 そこで当社は、立坑深が浅くできる円弧推進工法を提案し採用された。このため、オープンケーソンで計画されていた立坑も鋼矢板方式に変更された。
b.掘進機の選定
土質はシルト層でN値が2前後の粘性土が主体であり、また、発進・到達坑付近の浅い所では埋土が存在している。さらに、運河中間部で管路断面下端から約1mの位置に砂礫層が49m存在している(礫径は10〜20mmが主体で最大100mm程度)
掘進機は、粘性土が主体であることや大量に発生する掘削土を場内の埋め立てに利用することから、排土が利用できるアルティミット工法の土圧方式が選定された。また、砂礫層の礫や埋土層内からの異物が予想され、スクリューコンベアは軸付きで、羽根径500mm、羽根ピッチ400mmと大きく設定した。
c.推進力の低減
管径が3000mmと大きく、円弧推進施工であることから管外周面摩擦抵抗力が非常に大きくなることが予想された。
低推進力で効率良い推進施工を行うために、推進用滑材として開発された摩擦係数が低減できる「アルティーK」滑材が採用され、滑材の注入方法としてはアルティミット工法システムの一つであるULIS(アルティミット滑材充填システム)が用いられた。注入孔の間隔は、管径を考慮して25mで設定された。
また、推進力の増大を想定して、中押設備(1000kN×12台)が1ヶ所計画された。
推進路線図
推進路線図

(3)施工結果
 円弧推進施工のため、推進設備である発進・到達の両坑口壁、推進台及び支圧壁を10°の勾配で設置した。
 推進中、発進立坑から25mまでと、到達立坑付近での土被りの浅い埋め土層内から石魂等の異物が出現し、若干掘進に手間取ったが精度良く、河川下を横断する縦断曲線推進施工を完了した。

1.2 工事事例−2
(1)工事概要
 本工事は、千葉県我孫子市より利根川を横断し、茨城県利根町へ高圧ガス管を敷設するための推進工事である。

  • 工事件名:利根川横断推進工事
  • 工事場所:千葉県〜茨城県内
  • 推進管径:呼び径 1100(ヒューム管)
  • 推進延長:574m(1スパン)
  • 土 被 り:13.0m
  • 土  質:砂、砂質シルト、粘土
  • N  値:2前後
  • 曲 線 部:R=688m(縦断)
利根川横断推進施工箇所
利根川横断推進施工箇所

(2)施工上の課題と対策

a.掘進機の選定
利根川下の横断で、推進管の高さは利根川最深河床より土被り3.7mで設定されており、切羽水圧が0.15MPaと高くなることが予想され、掘進機としては、地下水圧に対抗するのに最も適したアルティミット工法の泥水方式が採用された。
b.高水圧によるバッキング防止
初期推進時に、掘進機面板にかかる切羽水圧により発生するバッキングが取り上げられ、 その対策が協議された。
対策としては、予めヒューム管の両側面の下方にアンカーを埋め込み、 M16ボルトでバッキング防止専用金具を取り付け、推進台に設けたストッパーに固定する方法が採用された。
c.推進力の低減
地下水圧が高く、推進延長が574mと長い河床下の横断推進であり、 推進力の増大による推進工程の遅延や管端面の破損が問題として取り上げられた。
対策としては、管外周面摩擦抵抗力を低減させる推進用滑材「アルティーK」が用いられ、 滑材の注入方法としては、ULISが採用された。
また、推進力の増大を想定して中押設備(300kN×10台)が1ヶ所計画された。
d.精度管理
推進延長が574mと長いため、レーザートランシットを用いる方法では視準距離に限界がある。
このため、200m以内ではレーザートランシットを使用し、 それ以上では掘進機に搭載したリアルタイム計測システム(ジャイロコンパス、液圧差レベル計測装置) と自動測量装置を併用して測量の簡素化を図ることとした。
推進路線図
推進路線図

(3)施工結果
 土被りが最深河床より3.7mの箇所があり、河床からの泥水や滑材の噴出が懸念されたため、送泥圧・注入圧の管理に十分に注意して推進施工を行った。 事前の課題に対する検討対策により、初期推進時のバッキングもバッキング防止専用金具により阻止でき、推進施工は低推進力で高精度を維持して順調に終了した。 推進力は、ULISにより管外周にアルティーKが均等に充填されたことによって、計画した推進力6700kNが3300kN(縁切時)と低減できた。
 精度管理は、推進延長200mを境に、自動測量装置を使用して管内測量を実施し、測量時間の短縮が行えた。

1.3 工事事例−3
(1)工事概要
 本工事は、西部ガスの都市ガスから液化天然ガスへの転換事業として、福岡県から佐賀県までのパイプライン呼び径400を敷設する工事の中で、佐賀県と福岡県の県境を流れる、九州でも最大の筑後川を横断するための鞘管推進工事である。

  • 工事件名:筑後川横断推進工事
  • 工事場所:佐賀県〜福岡県内
  • 推進管径:呼び径 1200(ヒューム管)
  • 推進延長:505.68m(1スパン)
  • 土 被 り:14.3m
  • 土  質:凝灰質砂岩 

火山灰質土に凝灰岩の礫が混入している状態で礫径は最大50mm程度と考えられ、礫率40%、 残りが砂質シルト系の土質となっている。

筑後川横断推進施工ヶ所φ1200mm管内状況
筑後川横断推進施工箇所 / 管内状況

(2)施工上の課題と対策

a.掘進機の選定
筑後川の横断工事で、地下水位はGL-3.2mであり、推進管路部における水圧は、0.14〜0.19MPa程度であると考えられ、 掘進機としては地下水圧に対抗するのに最も適したアルティミット工法の礫泥水方式が採用された。
b.高水圧によるバッキング防止
筑後川下の横断で、掘進機面板にかかる高水圧によりバッキングの発生が考えられ、その対 策が検討された。
対策としては、坑壁を構築するSMWの鋼杭にPC鋼棒を固定することによって対処した。
c.推進力の低減
500mと長距離の河川下横断推進工事であり、推進力の増大は推進管のひび割れや端面の破損等が発生し、管内に地下水とともに土砂が流出したりして、推進施工を困難にさせる。
 そのため、管外周面摩擦抵抗力を低減させる滑材として、高粘性で水溶性の小さい「アルティーK」が採用され、 滑材の注入方法としては、一次注入、二次注入を自動的に行えるULISが計画された。
d.精度管理
長距離推進施工のために、推進精度維持管理の方法としてリアルタイム計測システムと自動測量装置が採用された。
推進路線図
推進路線図

(3)施工結果
 推進施工は、自動滑材充填システム(ULIS)による円滑な滑材注入が行われた結果、計画最終総推進力7700kNが到達時において、1500kNと低推進力で推進することができた。
 低推進力のために、推進管のバッキングも比較的長時間にわたって影響したが、当初からの対策で効率良く防止することができた。
 推進精度は、リアルタイム計測システムによる測定値と自動測量装置による測定値との相互チェックを行うことによって高精度に納めることができた。

 2.おわりに

以上、アルティミット工法の概要と河川下の横断と推進施工事例について報告した。
 大河川下の横断という特殊な条件の中で施工であったが、本工法のシステム技術を施工条件に合わせて適宜選択して、短期間で高精度に完成できたことで、本工法の実用性を確認した。
 今後、道路事情や周辺環境の配慮等から、ますます長距離・急曲線推進施工による管渠敷設の要望が増えてくることから、あらゆる条件にも確実で経済的に対応できる本工法が寄与できるものと考える。