No.229 曲線推進用目地開口調整装置について

開発部

 1.はじめに

曲線推進施工において、推進管は曲線始点にくると掘進機が造成したトンネル孔に沿って管の継手部で曲線外側の目地が開口して屈曲します。 計画曲線に沿った線形を維持するためには、各継手部の目地が均等に開口していることが必要です。 トンネル孔に沿って推進管を追随させるための有効なシステムとして、管の継手部の上下(または左右)対称位置に塑性領域を利用したクッション材を装着する、センプラカーブシステムが多く採用されています。
 しかし、推進管周辺の地盤が軟弱な土質の場合には、推進力の分力として発生する曲線外側への力に対して、これに対抗する側方からの地盤反力が得られず、1ヶ所の継手部で管端が外側にせり出し、継手部の目地開口長が許容値を超えてしまうという問題が発生することがあります。 特に曲線半径が小さくなる超急曲線推進施工では、外側への分力がより大きくなり顕著になります。
 このような問題を解決するため、当社は関西電力(株)、(株)きんでんとの共同で、曲線推進施工において各推進管の継手部の目地開口長が均等となる曲線推進用目地開口調整装置を開発し、実用化しました。
 この装置は、関西電力(株)発注の曲線半径R=30mの曲線推進工事に採用され、各継手部の目地開口長を調整することによって、曲線形成を計画通りに完了することができました。
 本装置は、3社によって特許出願がされ、平成10年に登録されました。以下に、曲線推進用目地開口調整装置の内容について説明します。

 2.目地開きストッパー装置技術

2−1.特許の範囲
 特許として登録されている技術の構成は次のとおりです。
 推進管先端の段落部に配置された先端連結面と推進管後端のカラーの内部に挿入される先端連結面と対向して配置された内部連結面とが対向する周方向の複数個所には、先端連結面と内部連結面とを軸方向に許容範囲内で移動可能に連結するとともに許容範囲を変更できる連結手段を備えている曲線用推進管です。
 上記は特許出願明細書の文で、分かり易く書きますと、推進管継手部の対向する管端面の周方向の複数個所に、軸方向に許容範囲内で移動可能に連結するとともに許容範囲を変更できる連結手段を備えている推進管です。
 連結手段としては、各連結面を貫通して連結するボルトナット方式や連結面に切り欠きを設けて連結する連結棒方式、そして継手部を挟んで管の内壁に設けたアンカーボルトを長孔を設けたフラットバーで連結する方式等が考えられます。
(図−1、図−2、図−3)

図−1、図−2、図−3 連結手段

2−2.MAX推進管
 曲線推進用目地開口調整装置が採用された推進管を以下に紹介します。

(1)概 要
 推進工法は、施工技術の急速な進歩・発展に伴い、従来のシールド工法の領域である超長距離・超急曲線および多曲線まで可能となり、一方、耐震設計における推進管本体の断面照査では大きな抵抗曲げモーメントが必要となるケースも増えてきました。
 このような要望に応えるために、鋼・コンクリート合成管であるMAX推進管を開発しました。過酷な設計条件にも対応できるMAX推進管の採用が、より確実でしかも安全な超長距離・超急曲線推進施工を可能とします。

(2)特 長
高い外圧強度
 JSWAS A-2規格の推進管に比べ、3倍(MAX−3)および4倍(MAX−4)の外圧強度を有しています。(表−1)

呼び径 MAX−3(3種管)  kN/m{kgf/m} MAX−4(4種管)  kN/m{kgf/m}
ひび割れ荷重 破壊荷重 ひび割れ荷重 破壊荷重
800 106{10,800} 174{17,700} 142{14,400} 232{23,600}
900 115{11,700} 195{19,800} 153{15,600} 259{26,400}
1000 124{12,600} 215{21,900} 165{16,800} 287{29,200}
1100 128{13,050} 236{24,000} 171{17,400} 314{32,000}
1200 133{13,500} 259{26,400} 177{18,000} 346{35,200}
1350 142{14,400} 295{30,000} 189{19,200} 393{40,000}
1500 151{15,300} 330{33,600} 201{20,400} 440{44,800}
1650 159{16,200} 365{37,200} 212{21,600} 487{49,600}
1800 168{17,100} 401{40,800} 224{22,800} 534{54,400}
2000 177{18,000} 424{43,200} 236{24,000} 565{57,600}
2200 186{18,900} 445{45,300} 248{25,200} 593{60,400}
2400 195{19,800} 465{47,400} 259{26,400} 620{63,200}
2600 203{20,700} 489{49,800} 271{27,600} 652{66,400}
2800 212{21,600} 509{51,900} 283{28,800} 679{69,200}
3000 221{22,500} 530{54,000} 295{30,000} 707{72,000}
表−1  外圧強度

高い管軸方向剪断強度
 超急曲線施工に使用する短尺管(L=800mm以下)には、曲線部において管軸方向に曲げ、せん断応力が発生しますが、MAX推進管はそれに耐える高い管軸方向せん断強度を有しています。(表−2)

有効長(mm)
呼び径
管軸方向せん断強度  (kN) 許容耐荷力Fa  (kN{tf})
400 600 800 50N{500k} 70N{700k} 90N{900k}
800 72 73 74 2,296{230} 3,091{309} 3,974{397}
900 83 84 85 2,986{299} 4,020{402} 5,169{517}
1000 94 95 97 3,767{377} 5,070{507} 6,519{652}
1100 100 101 103 4,374{438} 5,888{589} 7,570{757}
1200 111 113 114 5,309{531} 7,147{715} 9,189{919}
1350 117 119 120 6,239{624} 8,399{840} 10,799{1080}
1500 133 135 137 7,939{794} 10,688{1069} 13,741{1374}
1650 145 147 149 9,451{945} 12,722{1272} 16,357{1636}
1800 156 159 161 11,092{1109} 14,932{1493} 19,198{1920}
2000 173 176 179 13,642{1364} 18,364{1837} 23,611{2361}
2200 191 194 197 16,455{1646} 22,151{2215} 28,479{2848}
2400 202 205 209 18,966{1897} 25,532{2553} 32,827{3283}
2600 219 222 226 22,259{2226} 29,964{2997}
2800 236 240 244 25,815{2582} 34,752{3475}
3000 253 257 261 29,635{2964} 39,893{3989}
 50N/mm2{500kgf/cm2}および70N/mm2{700kgf/cm2}はJSWAS A-2規格に、
90N/mm2{90kgf/cm2}はJSWAS A-8規格にそれぞれ準じます。
表−2  管の軸方向せん断力と許容耐荷重力


高い止水性能

継手部は鋼製で、特にスピゴット部は鋼板をロール加工で一体成型しているので高精度であり、大深度推進時の高水圧にも十分対応します。 また、超急曲線部内での止水性を保持するために曲線推進用目地開口調整装置を、オプションで装備しています。(写真−1) 写真−1 曲線推進用目地開口調整装置

 継手部は鋼製で、特にスピゴット部は鋼板をロール加工で一体成型しているので高精度であり、大深度推進時の高水圧にも十分対応します。 また、超急曲線部内での止水性を保持するために曲線推進用目地開口調整装置を、オプションで装備しています。(写真−1)

(3)形状と寸法
 形状と寸法は下記のとおりです。(図−4、表−3)

図−4 形状図

呼び径 内径
1 πD2 厚さ
有効長
ι1 Lc2 Tc Dc πD0 参考質量(kg)
400L 600L 800L 1200L 2430L
800 800±4 942±2 2992±3 80+4-2 400+4-2
600+4-2
800+4-2
1200+4-2
2430+4-2
180+2-0 180+2-1 4.5 951 3016±3 271 394 517 763 1520
900 900±4 1062±2 3299±3 90+4-2 1071 3393±3 339 492 646 953 1900
1000 1000±4 1182±2 3676±3 100+4-2 1191 3770±3 413 600 788 1160 2320
1100 1100±4 1292±2 4021±3 105+4-2 1301 4115±3 473 688 902 1330 2650
1200 1200±4 1412±2 4398±3 115+4-2 1421 4492±3 569 824 1080 1590 3150
1350 1350±5 1576±2 4901±3 125+5-2 6.0 1588 5027±3 688 1000 1320 1950 3900
1500 1500±5 1756±2 5466±3 140+5-2 1768 5592±3 854 1240 1630 2410 4810
1650 1650±5 1926±2 6000±3 150+5-2 1938 6126±3 1000 1460 1910 2820 5620
1800 1800±5 2096±2 6535±3 160+5-2 2108 6660±3 1170 1700 2220 3280 6510
2000 2000±5 2326±2 7257±3 175+5-2 2338 7383±3 1400 2030 2660 3930 7830
2200 2200±5 2556±2 7980±3 190+5-2 2568 8105±3 1670 2430 3180 4680 9300
2400 2400±6 2778±2 8671±3 205+5-2 190+2-0 190+2-1 9.0 2792 8828±3 2100 3010 3910 5730 11300
2600 2600±6 3008±2 9393±3 220+6-2 3022 9550±3 2420 3470 4520 6610 13100
2800 2800±6 3238±2 10116±3 235+6-2 3252 10273±3 2740 3940 5140 7530 14900
3000 3000±6 3468±2 10839±3 250+6-2 3482 10996±3 3170 4530 5890 8600 17000
表−3  寸 法 表 1:πD2は、管のシール材用溝の底部外周長を示します
2:πD0は、管の外周長を示します。ただし、D0=Dc+2Tcです
3:有効長(L)は、上記表の標準サイズ以外に300mm、500mm、700mmも製造できます
4:止水剤用注入孔を必要に応じて設けることができます

 3.曲線推進用目地開口調整装置を用いた施工例

(1)工事概要

  • 施工場所:大阪市内
  • 推 進 管:呼び径 1200mm 推進用ヒューム管および急曲線対応推進管(鋼管)
  • 推進延長:L=252.6m
  • 曲線半径:平面曲線 140m、30m、縦断曲線 100m
  • 土  質:砂混りシルト N=1〜2

(2)急曲線推進の課題と対応
シールド掘進機
 シールド掘進機の構造は、曲線半径30mに対応する折れ角(θ0)が 3.13°となります。使用するシールド掘進機の機能としての折れ角(θ)は、θ≧θ0とすると、4.695°となります。
 本工事では、曲線半径15mに対応する機能を有した折れ角θ=8.622°のシールド掘進機を製作しました。
急曲線対応推進管
 従来の推進用ヒューム管では、その管長および許容折れ角よりR=30mの急曲線線形に追随していくことは不可能であるため、別途急曲線対応の推進管(鋼製)を検討しました。
 急曲線対応推進管の構造については、推進用ヒューム管の優れた継手・止水構造を取り入れ、許容折れ角急曲線線形に応じた管長を設定しています。
 また、目地開き調整については、計画線形より算定されます。急曲線部の最大目地開き長さに応じて調整可能な曲線推進用目地開口調整装置を採用しました。(図−5)
 φ1200mm管の計算折れ角は1°36'であり、急曲線用の推進管長はL=695.4mmとなり、それ以下の長さであれば止水性が確保できます。今回使用する急曲線用推進管長は600mmとしました。
推進結果
 推進管の継手部に挿入したクッション材(センプラリング)によって、推進管列はシールド掘進機の造成したトンネル孔に追随し、推進管理値として設定した上下、左右±100mm以内に入る高精度で施工が完了できました。 急曲線区間の各継手部は、曲線推進用目地開口調整装置によって許容開口長が定められていることから、均等な開口長を維持できました。(写真−2)

図−5 曲線推進用目地開口調整装置 写真−2

写真−2

 4.おわりに

以上、曲線推進用目地開口調整装置について報告しました。側方の地盤反力に期待ができない場合や急曲線推進施工の場合には、継手部・1ヶ所づつの許容開口長が設定できるため、計画線形通りの正確な曲線推進施工が可能となりました。
 なお、本装置は特許登録されており、使用に際しては共同開発3社の許諾を必要とします。