No.211 自動滑材充填システム(ULIS)について

開発部 中村 光伸

 1.はじめに

近年の推進工事というと、長距離である事が当り前になってきています。その長距離推進を可能にするためには、これまで様々なものが開発されてきました。 工事に関する理論や技術力はもちろんのこと、推進にかかわる設備についてもそうです。当社では長距離急曲線推進システムとして「アルティミット工法」を確立しました。 アルティミット用マシン、特殊拡幅リング、ジャイロナビゲーションシステム、液圧差レベル計測システム、センプラカーブシステム、自動滑材注入システム、その滑材としてのアルティKなどによって構成されています。
 そして、今回、本誌で紹介しますのは、昨年末、滑材注入についての新たな考え方に基づいて開発した「ULIS」です。

 2.ULISについて

ULISとはUltimate(アルティミット)Lubricant(滑材)Injection(充填)System(システム)の略語で、自動滑材充填システムのことです。 従来の自動滑材注入システムとの違いがどこにあるのか。 注入と充填の違いだけではとお思いになるかも知れません。簡単にいえばその通りです。注入と充填の違いがこのシステムのポイントなのです。
 ULISは、推進開始から完了までの間、テールボイドを確実に確保し、そこを滑材で完全に充填された状態を維持することを最大の目的とし、推力の低減をはかる為に開発されたものです。 従来の自動滑材注入システムで推進管と地山とのクリア部分(テールボイド)を確保するためには自動滑材注入システム用の配管とは別に1次注入のための配管、つまり2系統の滑材用の配管が必要となっていました。 これは、現場の作業員さんにとって大きな負担にもなっていました。 しかし、今回開発したULISは、1系統だけで1次注入・追加注入(2次注入)が行え、それぞれのバブルユニットからは2つの吐出口が付いているので、今までは50mピッチでの注入でしたが、さらに細かく25mピッチで確実に行えるようになりました。これがULISという注入方式です。
 また、電圧降下の問題で自動滑材注入システムを用いての推進は700mが限界でしたが、その点も改善され、ULISでは1km以上が可能となりました。 これで、超長距離推進も夢ではなくなりました。
 さらに本システムには、電磁流量計も新たに装備されたので、注入量・流量の管理も可能となりました。
 次はULISの操作方法についてです。 従来の自動滑材注入システムはすべてがスイッチボタンを押すことにより操作していましたが、ULISはタッチパネル方式(カラー両面)になりました。 最近では駅の切符販売機や銀行のキャシュサービスでよく見かけるあれです。これらが切符販売機等に登場したときには皆さんも最初は、「なんだこれは?前のままで良かったのに。 難しそうだなー。」なんて思われたかもしれませんが、今では当り前のように使用されていることでしょう。ULISについても同じで、最初は扱いにくいと思いますが、勇気を出してタッチパネルを触ってみて下さい。
 なぜタッチパネル方式にしたかと申しますと、タッチパネルのサイズは縦12.4cm×横13.6cmのなのですが、その小スペースに多彩な機能の凝縮が可能にできるからです。 ULISのタッチパネルには、次の6項目がメイン画面として表示されます。

次はULISの操作方法についてです。 従来の自動滑材注入システムはすべてがスイッチボタンを押すことにより操作していましたが、ULISはタッチパネル方式(カラー両面)になりました。 最近では駅の切符販売機や銀行のキャシュサービスでよく見かけるあれです。これらが切符販売機等に登場したときには皆さんも最初は、「なんだこれは?前のままで良かったのに。 難しそうだなー。」なんて思われたかもしれませんが、今では当り前のように使用されていることでしょう。ULISについても同じで、最初は扱いにくいと思いますが、勇気を出してタッチパネルを触ってみて下さい。
 なぜタッチパネル方式にしたかと申しますと、タッチパネルのサイズは縦12.4cm×横13.6cmのなのですが、その小スペースに多彩な機能の凝縮が可能にできるからです。 ULISのタッチパネルには、次の6項目がメイン画面として表示されます。
ULIS


◎方法選択

自動注入モード、マニュアル注入モードは勿論のこと、先ほど述べたULISモードも追加され合計3種類の注入モードが選択できます。
◎初期設定
選択された注入モードで注入を行う為の設定値を入力します。この操作により計画流量も自動に計算され充填表示画面で表示されます。
◎充填記録
注入中に注入状況を監視できます。
◎データの初期化
データを初期化したい時に使用します。(但し、これまでのすべてのデータが消去されます。)
◎充填量表示
これまでに注入した滑材の注入量が、注入モード別・管番号別・全注入量別に表示されます。
◎上限圧設定
ポンプの吐出圧、注入孔における注入圧の管理上限値が設定できます。
このように安心して工事が行えるように、多彩な機能が満載されています。これらの設定の組み合わせによって、それぞれの現場に対応した滑材注入を行うことが可能となります。 次の表−1に改良された一覧を示します。
ULISの新機能等について(表−1)
ULIS 改   良   点
注 入 方 法 1系統(1次・追加注入)
注 入 モード ULIS・自動注入・マニュアル注入
管 理 方 法 流量・注入量・圧力・時間
吐  出  口 二股(ただし、先端は1つ)
最 大 使 用 距 離 1000(m)
中 央 操作盤 タッチパネル方式
ケ ー ブ ル 軽   量   化
ア ダ プ タ ー 小   型   化
ブ ー ス タ ー 内   蔵   型
最大バルブユニット使用台数  20 台
圧 力 単 位  MPa
データ 管 理 メモリー機能付(出力も可能)

 3.アルティKについて

前記しましたように、近年の長距離急曲線推進にともなう推力を低減させることは、とても重要な課題でありました。そこで2年程前に当社で開発された滑材がアルティKです。
 この滑材にはチキソトロピー性というものがあります。チキソトロピー性とは、静止状態では流動性がなく、ポンプ等により圧力が加えられると流動性が現われる性質をいいます。
 また、透水係数の高い地盤に対しても高吸水性樹脂を含んでいるため、希釈されることもなくテールボイド内で長期間保持され、長距離推進用の滑材としての性能をおおいに発揮できる滑材です。 アルティKの混合前は白色粉末状で、アルティK1.5kg(1袋)と清水200リットルをミキサーで10分程度撹拝すると粘度1,500(mPa.s)の乳白色液状の滑材(粘性のある大根おろしのようなもの)になります。

アルティーKの特長を次に示します。
◎全土質で管周面抵抗の低減効果が大きい。(管と土とのせん断抵抗値を著しく低減できる。)
◎水溶性が小さい。(水のあるところでも希釈せずにテールボイドに残る。)
◎高粘性で経時変化が少ない。(長距離推進の場合でも周面地山保持などの性能を長期間維持する。)
◎耐塩性が大きい。(水溶性と相まって塩分のある土質でも性能を相当程度維持する。)
◎取り扱いやすい。(200リットル当り1.5kgで、運搬し易く、撹拝時間も短い。)

 4.施工報告

ULISは昨年の11月に開発され、 今までに五十嵐工事・利根川工事・八街工事・大州工事の4現場で実際に使用されました。 そこで、今回は利根川工事・八街工事の施工結果を報告します。大州工事に関しては現在も使用中でありますので、後日、報告したいと思います。

◎利横川横断工事について

利根川横断工事は推進距離が563m、φ1100mmの河川横断工事で、水底面からの土被りが4〜20mの直線推進でした。地山の粒度分布は粘土75%、礫15%、シルト10%でした。 地下水位が高い為、地下水圧に対抗するのに最も適した、アルティミット工法の泥水タイプの掘進機が採用されました。 ULISのバルブユニットは合計12台使用しました。勿論、滑材の注入方式はULISモードで行いました。ULIS出荷前には綿密な動作チェックを行ってはきたのですが、当現場はULISの初の出荷ということもあり、若干のトラブルはありました。 たとえば、当初注入ポンプがピストン式であった為に、急激な圧力変化にULISの圧力センサーが敏感に反応してしまい、ULISの作動が安定しないことがありましたが、早急に定圧注入が可能なスクイズ式ポンプに交換することにより正常に機能するようになりました。 また、圧力センサーが繰作線からのノイズの影響を受けている傾向があらわれていたので、これも線同士に距離を保つことにより容易に対応ができました。 その後ULISは順調に滑材注入を行い、現場側の適切な対応や協力もあって、推進中の最大推力は190tf、縁切り推力に関しては300tfという、推進距離560mとしては超低推力の推進を可能にすることができました。 ここでグラフ−1に利根川工事の推力上昇グラフを添付しておきます。
 低推力ではあるもののグラフの傾斜にバラツキがみられるのは、基線上で土質の変化が数回みられたので、そのことが原因だと考えられます。
 また、河川横断ということで土質にかなりの地下水が含まれていると考えられる為、充填された滑材のその後が心配されました。 そこで、当工事では、テールボイドが確保されて滑材が確実に充填されていることを確認すると同時に滑材の劣化性を調べる為に、弾性逆止弁という装置をグラウトホールに取り付けました。 この弾性逆止弁とは、真中に穴が貫通しているゴムの魂のようなものです。使用方法は、滑材の注入箇所と次の注入箇所の間の注入孔に弾性逆止弁を設置し、そこにパイプ状の棒を挿し込み、充填後の滑材のサンプルを採取するというものです。 このサンプルはビスコテスターという粘性度測定器を用いて測定し、注入前の滑材と粘性を比較をすることにより劣化を調べます。その結果、滑材の劣化が起きており、滑材の粘性を上げるか注入量を増やすかの対処が必要であることがわかりました。

利根川工事のグラフ
グラフ−1利根川工事の推力上昇グラフ

◎八街工事について

八街工事の推進距離はφ800mmのダクタイル管で、施工はアルティミット工法の泥水工法でした。 ここの地盤は関東ローム層ということでテールボイドは確実に確保される為、当初、ULISは無論、滑材も必要ないという現場側からの意見がありましたが、さらなる低推力での推進が望めるということでULISが使用されることになりました。
 しかし、ULISは標準配置(バルブユニットを50mピッチに配置)せず、75mピッチでの配置が、現場側から提案されました (図−1に示します。これは、管セット・管内撤去の手間と時間の削減を考慮してのことです。 ただし、この配置の仕方には中継ボックス間の距離が1.5倍も長くなる為、推進距離が500m近い現場では通信機能に支障あるのでは、と懸念されましたが、テストを行った後問題無く使用できることがわかりました。
 また、推力に関しては推進中の最大推力は110tf、縁切り推力は160tfという、超低推力で、ここでもULISの効果は大いに発揮できたと思います。グラフ−2に八術工事の推力上昇グラフを示します。

図−1 八街工事のULIS配置図
図−1 八街工事のULIS配置図
グラフ−2 八街工事の推力上昇グラフ
グラフ−2 八街工事の推力上昇グラフ

 5.今後の展望

今回ULISを使用したすべての工事では、明らかに推力の低減に効果的であることが判りました。しかし、ULISはまだ完全に完成しているとは言い切れません。 今回、4現場で使用することにより、直接現場から様々な改良・改善点等を指摘していただくことができました。これには随時対応していき、だれもが安心して施工の行えるULISを作り上げていきたいと思います。 皆さんもULISを使用しての感想等を開発部に聞かせていただけたら、嬉しく思います。