No.207 「自動滑材充填システム(ULIS)の提案」

開発部

推進工法における滑材充填管理についての新しい考え方に基づいた「自動滑材充填システム」(ULIS)を開発し、このほど現場に導入しましたのでその概要を簡単に紹介します。

 1.ULISの概要

推進工法において推進に要する荷重の大きさは、あらゆる面で施工に大きな影響を与えます。推進荷重を低減させるためには、掘進機後部から発進坑口までの管外周部(テールボイド)に良質な滑材が、満遍なく、継続的に存在することが大切です。
 しかし、滑材は推進する地山の土質によっては推進中に地中へ浸透・拡散したり、地下水で希釈されたり、流されるなどして、その効果が持続しにくいという問題があります。
 新システム「ULIS」には滑材注入の持つそれらの問題を解決するために、それぞれ独自の制御システムである以下の三つの注入方式を備えており、現場の状況とシステムの特徴に応じて最も効果的、合理的な滑材注入方法が選択できるようになっています。

  1. 「自動滑材充填システム」(ULIS)
  2. 「自動注入システムおよび
  3. 「マニュアル注入」システム

A.「自動滑材充填システム」(ULIS)

自動滑材充填システム」(ULIS)とは、推進の開始から完了まで、掘進機によって形成されたテールボイド全体に滑材が過不足なく充填された状態を維持することを通じて、
1.周辺地山を保持し、
2.推進力を低減して安全確実に推進することを目的に開発された
「アルティミット用自動滑材充 填システム」のことです。
 具体的には、「一次注入量」と「追加注入量」を現場の施工条件に最も適合した形できめ細かく管理しながら滑材充填を行う「滑材充填の総合管理システム」のことです。本システムでは推進の進行にしたがって、推力データやテールボイドの大きさの変化、定期的な滑材のサンプリング検査などによって、その充填量を適宜見直すという注入管理を行います。
 ここで滑材の「一次注入量」とは、掘削直後にマシンの後方に注入する滑材の総量を指し、
1.掘進機(面盤)外径と推進管外径の差の分(テールボイド)の総容積と
2.周辺地山へ逸失する量(地山の透水係数によって異なる)の和のことをいいます。
 また滑材の「追加(二次)注入量」とは、注入した一次注入滑材が、推進中1.テールボイドから周辺地山へ浸透したり3.地下水に溶(流)出したりする分を補填する充填量のことをいい、地山の種類(透水係数)と一次注入からの経過時間の関数として求められます。
 また充填制御の面では、「自動滑材充填システム」(ULIS)は、一次注入と追加注入を同一の配管系統で送ることを最大の特長とし、一次注入(掘進機の直後)および追加注入(マシン後方の管路部複数箇所)それぞれへの充填量を計測しながら、各注入箇所のバルブを断続的に制御します。そして滑材が予定量充填されると、自動的にバイパスバルブが作動して注入を終了します。
 「ULIS」における滑材充填のシーケンス(例)は以下のようになります。

No.1→No.2→No.3→No.1→No.4→No.5→No.1→No.6→No.7→No.1→No.8→No.9…
※充填時間(即ち充填量)の配分は、推進距離などにもよりますが通常、No.1〉〉追加注入です。

B.「自動注入」システム

一次注入として、追加(二次)注入用滑材とは別(あるいは同一)材料を、別系統で配管して連続的に送る場合があります。この場合「自動注入」システムは、マシン後方、管路部への追加注入を「単純サイクル注入」方式で注入します。
 ここで「単純サイクル注入」方式とは追加注入の各箇所に同じ注入時間で、先頭の注入孔から後方の注入孔へと順次注入が切り替わり、再び先頭の注入孔に戻って注入する方式のことです。
 本システムではこの方式においても注入量の計測を行い、各管別に記録・管理をします。
 「自動注入」システムにおける滑材充填のシーケンス(例)は以下のようになります。

No.1→No.2→No.3→No.4→0.5→No.6→No.7→No.8→0.9→No.10→…
※充填時間(即ち充填量)の配分は、各Noとも均等です。

C.「マニュアル注入」システム

「マニュアル注入」システムでは、「自動滑材充填システム」(ULIS)あるいは「自動注入」システムで注入していて、途中で土質や管推進力が大きく変化したときなど、管路中の特定箇所に集中的に滑材を送りたい場合などに使われます。
 本システムではこの方式においても注入量の計測を行い、各管別に記録・管理をします。
 「マニュアル注入」システムにおける滑材充填のシーケンス(例)は以下のようになります。

注入孔選択No.5→注入孔選択No.4→注入孔選択No.2→注入孔選択No.3→注入孔選択…
※充填時間(即ち充填量)は、選択したNoに集中します。

 2.「ULIS」における滑材注入管理の基本的流れ
  • 前述の通り「ULIS」は、
  • (1) テールボイドの総容積(オーバーカットによる管外周部の空隙)
  • (2) 滑材が接する地山の浸水係数(地山への浸透)
  • (3) 発進してからの経過日数(地下水による希釈、流出など)を考慮して滑材の注入管理量を 決定し、それに基づいて滑材を注入するシステムです。
 そして滑材充填と推進をくり返しながら、次の手順で最適な充填管理を実現します。
  1. 初期データ(掘削径、土質など)から算出された充填管理基準に基づいて滑材充填を行い、
  2. 充填した滑材をテールボイド(管外周部)から定期的にサンプリング(抽出)して、
  3. その劣化や希釈状態を粘度計で検査し、
  4. その結果を以後の注入管理量算定に反映させます。

滑材の劣化や希釈の状態は、サンプリングした滑材の粘性を標準配合滑材(標準液)の粘性と比較して判断します。
 現場における滑材充填管理の流れを以下に図示します。

滑材充填管理の流れ

 またテールボイド内(管外周部)滑材の抜き取り検査を定期的に行い、きめ細かな滑材充填管理をするために、ULISには以下の機器、装置が標準装備されています。

  1. 特殊弾性逆止弁(掘進機から約75mの位置、以後約100m間隔で設置)
  2. 滑材サンプリング装置(テールボイド測定器兼用)
  3. 粘度測定器(ビスコテスタ)
 3.システムの構成

滑材の注入制御システムは以下で構成されています。(図−1参照)

図−1 配管・配線概要図
図−1 配管・配線概要図
 
A.中央制御盤
写真−1 ULIS中央制御盤
写真−1 ULIS中央制御盤
電源部、演算・表示・操作部、制御通信部などより構成されシステム全体の制御を行います。中央制御盤表面の押しボタンスイッチおよびタッチパネルで操作します。電源ケーブル、通信制御ケーブルおよびバイパスバルブ制御ケーブル(すべてメタルコネクタ付き)が接続されます。(写真−1)
B.注入中継ボックス
管路内に設置され、接続されたバルブユニットの開閉制御をします。また中央制御盤からの制御信号をその先のボックスに中継します。接続する位置とその機能によってA型、B型、C型、D型の区別があり、その記号がついたボックス間では互換性があります。
C.バルブユニット
管内、注入孔近くおよび立坑上に設置され、接続された注入中継ボックス、中央制御盤からの信号によって、電動ボール弁を開閉して滑材の流れを制御します。
D.通信制御ケーブル
メタルコネクタ付きの4心複合ケーブルです。中央制御盤からの制御信号を、管内に設置した各注入中継ボックスに伝えたり、No.1注入中枢ボックスからの注入圧力信号を中央制御盤に伝える役割を果たしています。
E.中継アダプタ
通信制御用複合ケーブルを接続するときにジョイントとして使用します。
 4.配管計画

配管は、高粘性の滑材を数百メートルにわたって送ることから基本的に2インチ配管とします。
 メイン配管:基本的に2インチSカラー付き鋼管(ホース配管にする場合は、バルブユニットの枢ぎ手を2"のホースアダプタに変更します。)
注入配管:1インチのホース配管(バルブユニットから注入孔までの配管)
バイパス配管:1インチのホース配管(バイパスバルブユニットから滑材タンクまで)

 5.中央制御盤の主要画面
A.[メインメニュ](図−2)
中央制御盤の電源を入れて数秒後に表示される画面です。全システムはこの画面を軸にして繰作されることになります。尚、他画面からこの画面に戻るときにはその画面内に表示されている メインメニュをタッチします。
B.「充填量表示」
図−3は「ULIS」方式専用の「充填量表示」画面です。他の注入方式にも専用の画面が用意されています。
 推進中の充填量管理は、この画面の情報をもとに行います。
図−2「メインメニュ」画面 図−3「充填量表示」画面
図−2「メインメニュ」画面
図−3「充填量表示」画面

 6.おわりに

「ULIS」は、既に長距離推進工事の数現場に配置され、それぞれテールボイドの保持と推力低減のために働いております。しかし、土質(透水性)によって決められる充填管理量の計算方法、滑材の劣化や経時変化の判断の明確な基準など、まだ試験の積み重ねを必要とする項目もあります。
 また各現場においては、これまでと異なり滑材の充填管理にかかわる手間が少し増えることになりますが、推進工事におけるテールボイドの保持と推力低減の意味、滑材充填管理の重要性を再認識していただき、すべての現場で安全な推進ができるようさらなる理解と協力をお願いしたいと思います。
 開発室としましても今後さらに情報を集めて総合的に分析し、より有効な推力低減の方法を確立するために力をつくしていきたいと思います。