No.201 管渠入換技術の傾向について

開発部

日本国内における下水道普及率の平均は、平成9年度末には56%となっているが、都市部においては下水道管渠敷設の歴史は古く、普及率も100%近くとほぼ完成した状況にある。
 早期に敷設された埋設管の老朽化は、確実に進行しており、既に一部の埋設管については管渠の入換工事が実施されつつあるのが現状である。
 このような作業は、交通阻害や工事公害等を考慮した場合には、必然的に非開削による管渠入換工法となってくる。
 この非開削による管渠入換技術の研究は、日本国内においても10数年前から行われている。この技術的傾向を1984年から1993年(8月末)までに出願、公開された工業所有権から調査し、分析した結果を、1995年にNO−DIG’95DRESDENにおいて報告した。
 今回は、その後に出願された工業所有権を調査し、1993年(8月以降)から1998年までの公開公報57件を、前回の170件に追加し、分析した。
 前回と同様に現在から1年6ヶ月以内に出願された技術は未公開であり、対象外となっているので、約2年前までの実態となっている。
 管渠入換工法の方法としては、前回の分析と対比できるように、下記に示すように同じ分類方法を採用した。

  1. 出願年度別分類
  2. 出願人の分類
  3. 旧管の撤去方法分類
  4. 新設管の管径分類
  5. 旧管の処分方法分類
 1 管渠入換分類とその傾向について
(1)出願年度別分類(グラフ−1参照)
[解説]
●グラフ−1は、1984年から1993年(8月末)の9年8ケ月の間に出願され、公開された170件(特許出願は162件、実用新案登録出願は8件)の前回デ−タと、その後の1993年(8月以降)から1998年の5年4ヶ月の間に出願され、公開された技術57件(特許出願は55件、実用新案登録出願は2件)を追加して分類したものである。
●1984年から1998年の15年間で、累計227件となる。227件中、特許出願は217件、実用新案登録は10件となっている。
[傾向]
●1985年から1991年にかけては、コンスタントに出願され、7年間で143件で、全体の 63.0%の割合を占めている。
●1993年には、1年間で39件、全体の17.2%と突出した出願となっている。その後は、減少して4年間で33件、全体の14.5%の出願となっている。
出願年度別分類−グラフ1   グラフ−1

(2)出願人の分類(グラフ−2、グラフ−3、グラフ−4参照)
[解説]
出願人業種別分類−グラフ2
グラフ−2
●グラフ−2は、1984年から1993年(8月末)までの9年8ヶ月の間に出願され、公開された170件を下記のように業種別で分類した前回のデータである。
A.建設業者  85件
B.管材業者  41件
C.機械業者  32件
D.他分野業者  9件
E.官 公 庁  3件
計 170件
[解説]
出願人業種別分類−グラフ3
グラフ−3
●グラフ−3は、その後の1993年(8月以降)から1998年までの5年4ヶ月の間に出願され、公開された57件を分類した今回分データである
A.建設業者  29件
B.管材業者   6件
C.機械業者  18件
D.他分野業者  0件
E.官 公 庁  4件
計 57件
●グラフ−4は、前回と今回分を累計した227件の分類データである。
出願人業種別分類−グラフ4
グラフ−4
A.建設業者 114件
B.管材業者  47件
C.機械業者  50件
D.他分野業者 9件
E.官 公 庁 7件
計 227件
●前回、出願件数170件中、出願人件数でみると297人が出願しており、170件中、52件(30.6%)が共同出願となっている。
●今回分の出願件数57件中では出願人件数でみると88人が出願している。共同出願件数は19件となっている。
●累計すると、共同出願人は385人、共同出願件数71件(31.3%)となっている。
[傾向]
●前回分と今回分の業種別分類は、多少の増減は見られるが、全体的な比率では余り変化はない。しかし、今回分では機械業者の出願が増加しており、累計でも管材業者を抜いて第2位に入ってきている。
●累計の業種別で見ると、最も多く出願しているのは建設業者で114件(50%)、社数で見ると188社(今回は41社)になる。
●共同出願件数から見た業種別の傾向を見てみると、71件の内訳は
建設業者+建設業者 13件 (今回分2件)
建設業者+管材業者 2件 (今回分1件)
建設業者+機械業者 44件 (今回分13件)
管材業者+機械業者 4件
管材業者+他分野業者 4件
管材業者+管材業者 2件 (今回分2件)
官公庁  +機械業者 2件 (今回分1件)
●建設業者と機械業者の共同出願が44件(62.0%)と非常に多くなっている。
(3)旧管の撤去方法分類(グラフ−5、グラフ−6、グラフ−7参照)
[解説]
●グラフ−5は、1984年から1993年(8月末)までの9年8ケ月の間に出願され、公開された170件を以下のように旧管の撤去方法で分類した前回分データである。
出願人業種別分類−5
グラフ−5
A.切   削 30件
B.引抜・押出 24件
C.外周掘削   5件
D.破  砕  70件
E.衝撃破砕   6件
F.切  断  28件
G.内部挿入   7件
計 170件
[解説]
旧管の撤去方法分類−6
グラフ−6
●グラフ−6は、その後の1993年(8月以降)から1998年の5年4ヶ月の間に出願され、公開された57件を同じ方法で分類した今回分データである。 
A.切   削 17件
B.引抜・押出  4件
C.外周掘削   3件
D.破  砕  19件
E.衝撃破砕   1件
F.切  断   8件
G.内部挿入   5件
計 57件
[解説]
旧管の撤去方法分類−7
グラフ−7
●グラフ−7は、前回分と今回分を累計した227件の分類データである。
A.切   削 47件
B.引抜・押出 28件
C.外周掘削   8件
D.破  砕  89件
E.衝撃破砕   7件
F.切  断  36件
G.内部挿入  12件
計 227件
●7種の撤去方法を、代表的な一例を図に示し、説明していく。なお、これらの図面は出願明細書の図面を利用している。

A.切削…掘削機先端の環状カッタヘッドで旧管を切削し、ジェットカーテンで切削粉を後方へ搬出する。切削の場合、旧管を完全撤去することが多い。(図−1参照)

図−1図−1

B.引抜・押出…鞘管を旧管に覆せ、発進立坑から順次新管を推進させて旧管と鞘管を押し出す。(図−2参照)

図−2図−2

C.外周掘削…掘削機先端のノイズから高圧流体(例:水)を噴射して、旧管の外周を掘削して押し出す。(図−3参照)

図−3 図−3

D.破砕…鋼棒をガイドとして破砕ヘッドを推進させ旧管を破砕する。(図−4参照)

図−4 図−4

E.衝撃破砕…鋼棒をガイドとして破砕ヘッドを衝撃式推進機で推進させ、振動衝撃を与えて旧管を破砕する。
(図−5参照)

図−5図−5

 F.切断…旧管をディスクカッタで切断し、先導管を推進させて押し出す。(図−6参照)

図−6図−6

G.内部挿入・・・テーパ管を小径部を先にして、マンホールの一方からワイヤで牽引して、順次テーパ管を旧管内に挿入する。(図−7参照)

図−7図−7

[傾向]

●前回分と今回分を見た場合、切削方法と破砕方法の2つが多く出願されており、この2つの撤去方法で136件(59.9%)となっている。
●7種類の分類の中で、最も多い撤去方法は、破砕で89件(39.2%)を占めている。
●破砕をはじめ、切削、衝撃破砕という旧管を取り崩す方法は、179件(78.9%)となっている。
●グラフ−8、グラフ−9、グラフ−10は、破砕方法を更に細かく5種類に分類したもので、 グラフ−8は前回分、グラフ−9は今回分、グラフ−10は累計となっている。
  1. 破砕ヘッドを推進させて破砕
  2. Aの方法に加えて、破砕ヘッドを前方からウインチ等で牽引
  3. 破砕刃を放射状に開いて破砕
  4. 旧管内に貫通させたロッドの先端に破砕装置を取り付け、ロッドを引さ抜きながら破砕
  5. その他
グラフ−8
グラフ−9
グラフ−10
破砕方法分類−8 破砕分類方法−9 グラフ−10
●グラフ−8の分類状況
  1. 40件
  2. 27件
  3. 2件
  4. 1件
  5. 0件  計 70件
●グラフ−9の分類状況
  1. 17件
  2. 0件
  3. 0件
  4. 1件
  5. 1件  計 19件
●グラフ−10の分類状況
  1. 57件
  2. 27件
  3. 2件
  4. 2件
  5. 1件  計 89件
●破砕方法としては、破砕ヘッドを推進させて破砕する方法が、前回分も今回分も飛び抜けて多くなっており、特に今回分は17件(89.5%)と突出している。
●グラフ−10の累計を見ると、掘削ヘッドに関連した破砕方法AとBを合わせると、84件(94.4%)となる。破砕するという方法自体に大きな違いはないが、破砕片の除去方法や破砕ヘッドの形状・構造に相違点が見られる。
(4)新設管の管径分類(グラフ−11、グラフ−12、グラフ−13参照)
[解説]
新設間の管径分類−11

グラフ−11
●グラフ−11は、1984年から1993年(8月末)までの9年8ヶ月の間に出願され、公開された170件を新設管の管径を、旧管の管径を基準にして下記のように、分類した前回分データである。
A.旧管より大       86件
B.旧管と同じか旧管より大 18件
C.旧管と同じ       59件
D.旧管より小        7件
計 170件
●グラフ−12は、1993年(8月以降)から1998年までの5年4ヶ月の間に出願され、公開された57件を分類した今回分データである。
新設管の管径分類−12

グラフ−12
A.旧管より大       20件
B.旧管と同じか旧管より大  0件
C.旧管と同じ       31件
D.旧管より小        6件
計 57件
●グラフ−13は、前回分と今回分を累計した227件の分類データである。
新設管の管径分類−13

グラフ−13
A.旧管より大       106件
B.旧管と同じか旧管より大 18件
C.旧管と同じ       90件
D.旧管より小       13件
計 227件
●分類でAとBの相違は、Aは旧管より大きなものだけが施工可能で、Bは旧管と同径でも、大きな径でも施工可能なことを意味する。Cは旧管と同径の新設管のみが施工可能なものである。
[傾向]
●前回分と今回分を比率で見た場合、旧管より大が減少(15%減)し、旧管と同じが増加(19%)している。
●1993年(8月以降)から1998年の今回分のデータ(グラフ−12)では、「旧管と同じか旧管より大」が0件と、全く出願されていない。
●下水流量を減少させないためには、旧管より管径を小さくしないことであり、その傾向をグラフ−13で見てみると、「旧管より大」、「旧管と同じか旧管より大」、「旧管と同じ」が、214件(94.3%)と非常に多くなっている。
●これに対して、旧管より小さい径をもつ新設管は、227件中、13件(5.7%)と少なくなっている。
(5)旧管の処分方法分類(グラフ−14、グラフ−15、グラフ−16参照)
[解説]
旧管の処分方法分類−14

グラフ−14
●グラフ−14は、1984年から1993年(8月末)間での9年8ヶ月の間に出願され、公開された170件を、下記のように旧管の処分方法別に分類した前回分データである。
A.完全撤去      107件
B.破砕して外部に残す 53件
C.現状のまま残す    7件
D.一部残す       3件
計 170件
●グラフ−15は、1993年(8月以降)から1998年までの5年4ヶ月に出願され、公開された57件を分類した今回分データである。
旧管の処分方法分類−15

グラフ−15
A.完全撤去       31件
B.破砕して外部に残す 17件
C.現状のまま残す    9件
D.一部残す       0件
計 57件
[解説]
旧管の処分方法分類−16

グラフ−16
●グラフ−16は、前回分と今回分を累計した227件の分類データである。
A.完全撤去      138件
B.破砕して外部に残す 70件
C.現状のまま残す   16件
D.一部残す       3件
計 227件
[傾向]
●前回分と今回分を対比した場合、今回分の「完全撤去」がやや減少しているものの、全体的な比率としては余り変化は見られない。
●4分類の中で、最も多い処分方法は「完全撤去」で、227件中、138件(60.8%)となっている。
●「完全撤去」の方法には2種類あり、旧管を破砕、切断して撤去する方法と、旧管の形状を維持したまま押出し、引き抜く方法とがある。
●「破砕したものを外部に残す」の方法は、公道下の制約等が多いと考えられるが、前回分と累計分を村比してみると、31%と変化がなく、減少傾向となっていない。
●「現状のまま残す」の方法は、旧管の内側に新設管を配設し、旧管と新設管の間に接着材を充填して一体化する方法が多く見られる。
●「一部残す」の方法は、地山の崩壊を防ぐために、旧管の上部だけ残す方法で、掘削速度も速く、掘削量も少なくすむという利点があるが、外部へ残すと同様の制約がある。
 2.考察
  1. 日本国内においては、1985年から埋設管の老朽化問題が取り上げられ、小型カメラの開発により、管内の調査も行われだしたことより、1985年から1989年にかけて出願が伸びている。
     しかし、1990年以降は減少の傾向をたどっている。 しかし、1993年には、出願件数が39件と突出している。これは出願人傾向からも明らかなように、一般建設業者の出願によるものである。今後の大きな需要を見込み、新規事業となる管渠入換分野への陣取りを図ろうとするねらいと考えられる。
  2. 都市部においては、埋設管の老朽化は確実に進行しており、近い将来必要な技術となってくることは明確であり、出願の傾向としては増加してくることが予想されるが、現時点ではその傾向は見られない。
  3. 本格的な需要によって、制約条件や施工条件等が明確になってくると、管渠入れ換え技術もより具体化、細分化された発明が多くなってくると考えられるとともに、出願件数も大幅に増加してくることが予想できる。