No.258 大口径管の長距離・超急曲線推進の難工事を克服したアルティミット工法

1.はじめに

開発室では現在、小口径掘進機による曲線推進実現の一つとして、電磁誘導を利用した測量装置の開発を行っています。「電磁誘導といきなり言われてもちょっとわからない。」と思っている人もいるかと思いますので、今回は電磁誘導の原理と、今回開発を行ったチェックボーリング方式の概要について報告します。

2.電磁誘導
2−1.磁界
 みなさんは子供の頃に、棒磁石の上に厚紙をおき、その上に砂鉄をふりかけて、遊んだことはないでしょうか。
 砂鉄は厚紙の上で、図−1のようにN極とS極の間に、きれいにならびます。これは磁石のN極からS極への磁気の力を持った線が出ているからです。
 この磁気の線を磁力線といいます。磁力線があって磁気の力の及ぶ範囲を磁界といいます。

2−2.電磁力
 図−2のように、磁界中に導体をおき、電流を流すと、導体は矢印の方向に動きます。これは電流と磁界との間に力が生じたためで、これを電磁力とよんでいます。
 では、どうしてこのような現象がおこるのでしょうか。
 図−3(a)のように、磁界中におかれた導体に電流を流すと、同心円形に磁力線ができます(これを右ねじの法則といいます)。その結果、図−3(b)のように、導体の左側では、磁石による磁力線と電流による磁力線の方向が同じになるため、磁力線が重なりあって、磁束密度が高くなります。また、導体の右側では、磁石による磁力線と電流による磁力線の方向が反対になるため、磁力線は互いにうち消し合って磁束密度が低くなります。
 このため、導体は磁束密度が低い方へ押しやられ、導体が動くのです。
 これは、「フレミング左手の法則」といい、みなさんも聞いたことがあると思います。人差し指を磁力線の方向、中指を電流の方向とすると、親指の方向に力が発生するというものです(図−4)。

図−1
図−1

図−2
図−2
図−3 電磁力の発生
図−3 電磁力の発生
図−4 フレミング左手の法則
図−4 フレミング左手の法則
図−5 フレミング右手の法則
図−5 フレミング右手の法則

2−4.コイル

 電線を輪に巻いたものをコイルといいます。電磁誘導測量では、電線の巻き数を多くし、筒状に密接して巻いた、ソレノイドコイルというものを、使用します。
 このソレノイドコイルは電流を流すと、磁力線が図−6のようにコイルの内側から発生します。考え方は図−1と一緒です。コイルの中心を通る磁力線は、コイルの中心軸と一致することから、これを測量に利用しようと考えたものです。


3.電磁誘導測量の基本原理

導体に電流を流すと、その周りには流れた電流の大きさに応じた強さの磁界が生じます。
 導体に流す電流が交流の場合には、交流電流は時間とともにその大きさと方向が変化するので、それによってできる磁界の大きさと方向も電流と歩調を合わせて変化します。このような磁界を交番磁界といいます。
 また、磁界の強さが変化すると、その範囲内にある導体には、磁界の強さと変化の速さに応じた大きさの起電力が発生します。
 図−7を見て下さい。発信用のソレノイドコイル(以後、発信コイル)に交流電流を流すと、発生した交番磁界によって受信用のソレノイドコイル(以後、受信コイル)に起電力が生じます。
 発信コイルからでた磁界の強さは、発信コイルに近いほど大きくなるので、この図の場合には発信コイルの真上が最も起電力の大きい場所となります。その起電力の大きさを測定し、マシンの位置を探査する方法が、一般的な電磁誘導測量の原理です。


図−6 磁力線

図−6 磁力線

図−7 電磁誘導

図−7 電磁誘導



4.チェックボーリング方式電磁誘導測量

4−1.本装置の測定原理
 第3項では、発信コイルの真上が最も起電力が大きくなると説明しました。しかし、これは受信コイルの向きを図−8(a)のように設置した場合のことで、この方法だと、受信コイルの磁界を読みとる範囲が大きくなるため、発信コイルの真上を正確に求めるのが困難になります。
 本装置では、図−8(b)のように受信コイルを縦に設置しています。これにはどういう意味があるのでしょうか。
 コイルの向きが、90度変わっています。このことにより、図−8(a)のように受信コイルの内側を通って大きな起電力を発生させていた磁界が、コイルの内側を通りにくくなり、小さな起電力しか発生しなくなります。発信コイルの真上にいたっては、まったく起電力を発生しなくなります。(図−9)
 本装置には、受信コイルが10個ならべて設置してあります。これは受信コイルの起電力がゼロになるところ、または最も低くなるところを見つけるために、あるのです。(図−10)

図−8 起電力の測定方法
図−8 起電力の測定方法
図−9 受信コイルによる起電力の違い
図−9 受信コイルによる起電力の違い
図−10 受信コイル
図−10 受信コイル
4−3.本装置の構成
本装置は、発信器、受信器、傾斜計と、大きく3つに区分されます。それぞれの内容について説明します。

・発信器
推進の計画線上にボーリングでケーシング管(VP75)を埋設し、その中にワイヤロープで発信コイルを吊し設置します。発信コイルには電流を送るためのケーブルがつないであり、地上にある発信ユニットから電流を送ります。
 発信コイルを設置する作業は道路上で行う場合が多く、発信ユニットも道路上に設置しなければならないので、発信器は測定の時だけ設置します。

・受信器
推進機直後のヒューム管に水平に設置します。
受信器には受信コイルが、10個(No.1〜10)ならべて設置してあり、それらを挟むような形で2個(AとB)の受信コイルが設置してあります。(図−11)10個のコイルは、切り替えスイッチにより各コイルの起電力を測定できるようになっています。第4−1項で説明したとおり、起電力の一番低いところの真上に発信コイルがあることになります。
 また、AとBのコイルでは、発信コイルの推進軸方向の位置を測定します。ヘッドホンから聞こえる「キーン」という音が、聞こえなくなったところの真上あたりに発信用コイルがあることになります。(図−12)

・傾斜計
ケーシング管の曲りや傾きによる地上(地上孔)と、地中(発信コイル取り付け位置)の座標の差を求めるために使用します。ケーシング管の中に専用の溝付管を設置し測定します。(図−13)


図−11 本装置の測定方法
図−11 本装置の測定方法
図−13 傾斜系
図−13 傾斜系
図−12 受信コイル位置決め
図−12 受信コイル位置決め

5.おわりに

今回紹介したチェックボーリング方式の電磁誘導測量装置は、アルティミット工法の精度向上のために製作しました。  推進延長が長くなり、到達間際の光学測量の信頼度が低くなりそうな現場には最適と考えます。  道路上でのケーシング管の埋設など、現場の環境に左右される点もありますが、ぜひ、使ってみたいという現場がございましたら、開発室技術開発部までご連絡下さい。